ちくまブックレビュー「地学でめぐる信濃三十三番札所」

 「地学でめぐる信濃三十三番札所」
    地学団体研究会長野支部長野の大地
    編集委員会編集/しなのき書房刊

 観音霊場巡りの本は、全国各地の霊場札所がイドブックとして、今まで数多く出版されているが、人文分野の先生方の編集によるものがほとんどであった。

 この本は地学を専攻する研究者たちの団体、地学団体研究会長野支部の皆さんが「長野の大地編集委員会」を結成して出版されたもの。昨年の2月まで約4年間、長野市民新聞に連載された「長野の大地一信濃三十三番札所地学案内」が読みやすい案内書にまとめられた。

 お寺の立地と地質、断層、石造物などの石材利用、まわりの景観、隣接地の地学的特徴など、多角的にお寺を紹介、解説している。本の末尾にはこの本を監修している信大名誉教授の塚原弘昭先生(千曲市羽尾在住)が、観音霊場と地学との関係を解説。

また、信濃三十三番札所連合会事務局長・塩崎長谷寺住職、岡澤慶澄さんの寄稿文があり「科学と宗教はアプローチは違っても、私たちの生きている大地や世界の神秘に触れたいとする出発点は共通であると感じました」という読後感が共有できます。

 価格1540円(税込)屋代西沢書店ほか県内書店で発売中。