フォト&エッセイ 自転車のある風景 第十九回 オーストラリア横断自転車旅行⑦ 自転車旅行の水の話

 フォト&エッセイ 自転車のある風景

第十九回 オーストラリア横断自転車旅行⑦

自転車旅行の水の話

 旅の間の食事はたいがいは手のかからない簡単なものが多く、パンやインスタントラーメンが常食となっていた。“ご飯を食べないと力が出ない”と言う人がいるが、ゴハンはオーストラリアの旅には向かなかった。一食ぶんだけ炊くのが難しく、たくさん炊いても持ち歩けない。旅で使っていた調理器具は“ビリー”と呼ばれるオーストラリア版の飯ごう。湯沸かしも兼ねていたので残ったご飯が入っているとコーヒーを飲むこともできなくなってしまう。そして何より困るのは、食べ終わった後の洗い物にたくさんの水が必要になることだ。ラーメンのスープやパスタのソースはきれいに食べて拭きとってしまえばいいが、粘り気のあるご飯の片づけはそうはいかない。限られた量の水しか運べない自転車の旅では貴重な水を洗い物に使うわけにはいかず、必然的に米を炊くことはなくなった。それではその貴重な水をどこから手に入れていたのか?答えは天水つまり雨水である。とは言っても雨が降るのを待って自分で集めたわけではない。水が貴重なオーストラリアの内陸では、雨水を貯めるためのタンクが何か所も設置しており、その水を2リットルのペットボトル4本に移して使っていたのだ。大気のきれいなオーストラリアの大地に降った天然の蒸留水は、水道水のように消毒もされていないので都市部の水よりよっぽどおいしかった。ペットボトルが一本、また一本と空になって来ると、命の危険を感じながら水の使用量を減らして次のタンクまで持ちこたえようとする。水の豊富な日本では考えられないが、そんな環境だったから、余計にタンクの水がおいしく感じたのかもしれない。

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