フォト&エッセイ 自転車のある風景 第二十一回 オーストラリア横断自転車旅行⑨

フォト&エッセイ 自転車のある風景

オーストラリアの内陸部では、地図上には町として記載されているが、実際に辿り着くと大型のガソリンスタンドしかないというところが多くあった。一軒で郵便局、食堂、コンビニ、宿泊施設まで兼ねているその施設はロードハウスと呼ばれており、オーストラリアを行き交うドライバーや旅行者にとって欠かせない旅のオアシスとなっていた。ただ、人口が日本の約5分の1、人口密度にいたっては100分の1という広くて人の少ないオーストラリアなので、ロードハウスがそれ程賑わっているという印象はなかった。 

自分は調理器具の燃料補給とタイヤの空気補充のためにガソリンスタンドには定期的に寄っていたのだが、ナラボー平原にあるロードハウスは別の理由でそこに寄ることが目的になっていた。その目的とはロードハウスで自慢のハンバーガーを食べること。どこもメニューはハンバーガーしかないのだが、オージーサイズで、どこから食べればいいかわからない程大きかった。中身はパティー、ベーコン、チーズ、目玉焼き、トマト、オニオン、パイナップル、アボカドなどだいたいどこもいっしょなのだが、パティーの焼き方やバンズにこだわりがあり、それを食べ比べるのが旅の楽しみになっていたのだ。 

30年以上たった今では、どこのロードハウスが美味しかったか記憶は曖昧で、覚えているのはナラボー平原の全てのロードハウスのハンバーガーを食べたということだけ。 あんなに毎日食べていたハンバーガーなのに日本で食べるとなんとなく物足りなく感じてしまうのは、ロードハウスで食べたハンバーガーの味が、記憶に強く焼き付いているからと、食べる前に一日中、自転車を漕いでいないせいなのかもしれない。