ちくまブックレビュー『別所線 百年物語 公文書・報道・記憶でたどる上田の鉄道』

『別所線 百年物語 公文書・報道・記憶でたどる上田の鉄道』

        今尾恵介著 信濃毎日新聞社刊

別所線 百年物語 公文書・報道・記憶でたどる上田の鉄道
別所線 百年物語 公文書・報道・記憶でたどる上田の鉄道

 私の趣味もあり2か月連続の鉄道書籍の紹介となりますがお付き合いください(笑)。

 今回は昨年6月、大正6年に開業・開通から百年を迎えた上田電鉄別所線。開業当時は上田温泉電軌として上田小県地域の繁栄に一役買った鉄道網について、歴史をひも解く一冊の紹介です。

 以前は路線が四方へと伸び上田全域への鉄道網として繁栄していましたが、現在は塩田平を走る別所線のみ。別所温泉や生島足島神社への観光、長野大学や上田女子短期大学への通学、地域の足の要となりながら、過去には丸窓電車やハーモニカ駅長、最近では観光駅長と「鉄道むすめ 八木沢まい」などといった数々の話題性も多くあり、営業距離が短いながらも全国的にも知名度が高い私鉄です。

 そして何よりも上田電鉄が支持されていることを裏付けされた出来事には、令和元年台風19号災害で被災した「赤い鉄橋」でお馴染みの千曲川橋梁への復旧支援があります。全国の企業や団体をはじめ著名人からもたくさんの寄付や支持があり、見事復活をとげたのは記憶に新しいことです。

 巻末には数々の思い出を作文やエッセイとして公募された作品も収録され、市民の希望としても幾度となく廃線の危機を乗り越えてきたのかがうかがい知ることができる歴史鉄道書となっています。

               (文:田中一樹)

 価格1800 円(+税)

 屋代西沢書店ほか県内書店で発売中。