ウッドハウスの世界 森村たまき(21)

ウッドハウスの世界 森村たまき(21)

こんにちは、イギリス生まれのユーモア作家、P・G・ウッドハウスの翻訳をしております、森村たまきです。ちょうど嬉しいニュースが届いたところなので、今回はジーヴス・シリーズの漫画化作品、勝田文『プリーズ、ジーヴス』(白泉社)についてお話ししましょう。  ウッドハウス作品は初期サイレント時代から多数映画化されていますし、英国BBC、グラナダテレビ(第一シーズンは私の字幕・解説でDVDブック化されています)の名作と評価の高いジーヴス・ドラマをはじめ、かなりの数がドラマ化されています。ミュージカル・演劇ではウッドハウス本人が制作した作品群のほか、アンドリュー・ロイド=ウェバーによる『バイ・ジーヴス』など、今日でも新しい作品が製作上演されています。けれども、漫画化作品というのは意外と存在しないのです。五巻に及ぶジーヴス短編シリーズを、こんなにも高い精度で描き上げた勝田文さんの『プリーズ、ジーヴス』は、日本からウッドハウス界への大きな貢献だと、訳者の私も自負するところなのです。

 思い返せば二〇〇七年春三月、世界初ジーヴス漫画開始に向けた勝田さんと白泉社の編集さんのロンドン取材旅行に私も同行したのでした。大ウッドハウス研究家ノーマン・マーフィーの案内でロンドン中のウッドハウス史跡を歩き回り、メンバー以外入れないドローンズ・クラブのモデルことバックス・クラブにも入れてもらったり、ウッドハウスの甥御さんのサー・エドワード・カザレットと昼食をいただいたりと、できることは全部やって。とにかく勝田さんは真面目な人なので、写真撮り続け、質問し続けの日々で、ノーマンもこんなに質問連発されるのは初めてと、驚き喜び敬服してくれたのでした。

 白泉社『メロディ』誌連載中は勝田さんから山のようにやってくる質問に答え、わからないことはノーマンに訊いて夜な夜なメールのやり取りを重ね、というようなことを繰り返し、毎回漫画ができあがってくるのが楽しみな日々でした。

 冒頭に書いた「嬉しいニュース」というのは、その勝田さんが心血を注いで描き上げた山田風太郎原作『風太郎不戦日記』(講談社)が、手塚治虫文化賞マンガ大賞候補作にノミネートという知らせで、勝田さんがどんな細かいところにまでこだわり抜き、調べ抜いて描いているかを私はよく知っていますからね、応援するしかないのですよ。ウッドハウスの幸福の甘美と光明が勝田さんに降り注ぎますように。

※写真は『風太郎不戦日記』と『プリーズ、ジーヴス』を検分するねこのバーティー。

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