フォト&エッセイ 自転車のある風景 第二十三回 オーストラリア横断自転車旅行⑪  ロブとナスターシャ 2

フォト&エッセイ 自転車のある風景

第二十三回 オーストラリア横断自転車旅行⑪  ロブとナスターシャ 2

ロブ達と再会したのは次の町バラドニアのロードハウスだった。他に寄るところもない砂漠の真ん中で、彼等の赤いスポーツカーより自転車の自分のほうが先に着いてしまったのでどこで何をしていたのかと不思議に思ったが、その原因はどうやら彼等のクルマの故障のようだった。ロブの話しによると、自分と別れた後、酔い覚ましに昼寝をしてから出発した直後にフェアレディZのファンベルトが破損。応急処置でナスターシャのストッキングをファンベルトの代わりにしたのだが、手持ちの3本全部切れてしまっていよいよお手上げ。そんな時にたまたま通りかかった車に同じサイズのファンベルトをわけて貰ってどうにかバラドニアに辿り着いたということだった。

そもそも初めて二人に会った時も、オーバーヒートしたエンジンを冷ますためにボンネットを開け、車だけでなく本人達もビールを飲んクールダウンしていた二人。年代物の車でナラボーを横断するのに、ビールは積んでいるけど予備のファンベルトも持っていない。たまたまファンベルトを分けてもらえたから良かったが、そうでなければ未だに砂漠の真ん中だったかもしれないのに、ナスターシャのストッキングで何キロか走れた事を大笑いしながら話してる二人を見ていると、パースを出発する時にさんざん日本人はクレージーだとか言われたが、ロブ達に比べたら自分なんて大した事ないと痛感し、傍から見たら大変な状況も、笑いながら楽しんでいる彼等に尊敬の念すら抱いてしまったのだった。

その後再会を祝って再びビールで乾杯。ストッキング何本持ってたらナラボー横断できるだろうと真剣に話し込んでる二人を見て、”ストッキングよりファンベルト持ってろよ”と心の中でツッコミをいれながら、やっぱり旅をしていると面白い人に出会えるなあと改めて思ったのだった。