亀清旅館 タイラー・リンチさん

亀清旅館 タイラー・リンチさん

 コロナ禍のなか、苦境に立たされている観光業界だが、新たなビジョンでビジネスモデルを切り拓こうとしている人も多い。上山田温泉の亀清旅館、タイラー・リンチさんもその一人だ。

 昨年のステイホーム期間には仕出し弁当の販売にチャレンジ。今年のまん延防止措置の適用に伴い、配達を再開した。また、今回新たな商品開発にも着手。故郷シアトルで食べていたクッキーの味を思い出し、板長にレシピを伝授。宿泊客にサービスでお茶菓子として提供していたが、菓子製造の許可を取得し「シアトルクッキー」と命名して販売している。

 元々タイラーさんはコロナ前からビジネススタイルを変革しようと試みていたという。「団体の温泉客がバスで来ていた時代とは違う。今のお客さんのニーズに応えられないとダメ」。大浴場よりも個別の浴槽が好まれていると感じ、部屋を改修して個室の風呂を設けた。昨年は2つの個室露天風呂を増設したという。そのほか以前大型バスの運転手用だった部屋を、個室の食事会場に改装した。コロナが収束しても、もう以前の状態には戻らないと考え、積極的に業態の改革に取り組んでいる。

 自転車愛好家としても知られるタイラーさん。戸倉上山田温泉について「これだけサイクリングのコースと温泉が揃っているところはない」とその魅力を語る。昨年も「チクマサイクリングクエスト」などを企画したが、また新たな計画を検討中だ。町を探索するナビゲーションスポーツの「ロゲイニング」を自転車を使ってやってみたいなど夢は膨らんでいる。

アメリカ西海岸シアトル出身のタイラーさん