フォト&エッセイ 自転車のある風景 第二十五回 オーストラリア横断自転車旅行⑬ アオジタトカゲ

フォト&エッセイ 自転車のある風景 第二十五回 オーストラリア横断自転車旅行⑬ アオジタトカゲ

 アオジタトカゲ

 旅の途中によく見かけた“アオジタトカゲ”というトカゲの仲間がいる。トカゲといっても日本のトカゲやカナヘビと違って、体長は成体で50㎝程とかなり大きい。そして上から見ると太くて長い胴体の下に短い脚が隠れてしまい、まるでツチノコのように見える。実際に、以前テレビの深夜番組で”ツチノコ発見!”と言う煽り文句で、このトカゲを日本に連れて来て撮影したものがあり、コンプライアンスなんて言葉がなかった時代とはいうものの、やりすぎでは?と感じたのを覚えている。

 このトカゲの名前の由来は敵を威嚇する時に使う青い色の舌。ブルーハワイや青い色のかき氷なんかを喜んで食べている人間と違って、自然界では青は危険な色だということをほとんどの動物は本能で知っているので、アオジタトカゲはその青い舌で威嚇することで大抵の敵から身を守ることが出来るようだ。その証拠に、ほとんどの動物はヒトが近づいて行くと逃げて行くが、このトカゲは青い舌で威嚇するだけでまったく逃げようとはしない。旅の途中で良く見かけた理由も逃げずにその場で威嚇しているからなのだが、アオジタトカゲを良く見かけた理由がもう一つある。それはクルマが来ても逃げずに威嚇し続けて轢かれてしまうから。

 つまり生きている彼等と同じくらい彼等の死体も見かけたということだ。自然界では有効なその青い舌も、人間やその運転するクルマに対しては全くの無力だったのだ。木の枝で突こうとするとその枝に向かって舌を出し、こっちが飽きるまで遊んでくれるアオジタトカゲ。彼等をからかいながら、自分の力を過信せずに逃げる事も本当に大事なのだと改めて考えさせられたのだった。