コラム 漢字と花 楊・柳 やなぎ

コラム 漢字と花 楊・柳 やなぎ

 柳に挑躍する蛙、雨の中傘を差して佇む貴人の姿は、花札の桐の図柄です。この貴人は後世、空海(弘法大師)・菅原道真と共に書に秀でた三聖の一人、小野道風です。柳の枝に何度も飛びつこうと挑戦する姿を見て、発奮努力の末、書を大成。名を残しました。小學校の頃、修身の時間で習ったかな。柳の字は「しだれやなぎ」を指し、楊の字は「かわやなぎ」「ねこやなぎ」「たちやなぎ」を示し、判然と区別されています。

 楊の字を使った熟語で特殊な読み方としては、白楊(ポプラ)、赤楊(はんのき)、黄楊(つげ)、水楊(かわやなぎ)、楊梅(やまもも)等々が有ります。

 柳営(細柳営の略)漢の周亜夫将軍が守る細柳という土地の守備が固く、軍規が厳粛なことに武帝が敬意を表したことから、将軍の陣営の意。出典は「漢書」。本邦では江戸幕府または将軍の意に使われています。

 柳絮之才 女性の文章能力が秀でている意。六朝時代、晋の謝奕に道ロンという娘がおり、伯父で名臣として名高い謝安が来訪した折、雪が降り出した。謝安「これは何に似ている」と問うと、道ロン曰く「柳絮が風に舞う如し」と答えた。謝安はその才を誉め大いに喜んだと。詠雪之才とも詠絮之才とも言います。出典は「晋書」。

 尚、絮は柳や蒲公英などの綿毛のような種子。簡単に言えば「わた」です。柳絮は柳の実が熟して晩春には綿のように風に乗って乱れ跳びます。また雪の形容にも使われます。

(山田信彰)