フォト&エッセイ 自転車のある風景  第二十五回 オーストラリア横断自転車旅行⑳  ナラボー平原とUFO 

フォト&エッセイ 自転車のある風景  第二十五回 オーストラリア横断自転車旅行⑳ 

 ナラボー平原とUFO 

 ナラボー平原ではUFOの目撃が多いらしい。旅の途中で知り合った現地の人から、”この先にUFO注意の標識があるよ” と言われて楽しみにしていたのだが、標識は見つからず、代わりに”UFO注意!”の大きな看板がロードハウスの駐車場の中にあった。

1950年以降ナラボーではUFOの目撃及びそのUFOに追跡・拉致される事件が後を絶たず、注意喚起のために建てられた看板らしいのだが、どこかユーモラスで緊張感のかけらもない看板に、期待してたものと違っていてちょっとがっかりしたのを覚えている。とはいうものの、オーストラリア人がUFOに強い関心を持っているのは間違いない。

今から50年以上前、メルボルン近郊の学校にUFOが現れ、200人以上の教職員や生徒が目撃したという事件があった。世界的にも有名なウェストール事件である。自分が生まれるより前の話なのに、今だにテレビで当時の目撃者を集めた特番が組まれたりするUFO好きの間では知らない人のいない事件らしい。

ウェストール事件の真偽はともかく、ナラボー平原でUFOの目撃が多いのは、高速道路催眠現象が原因ではないだろうか?高速道路のようにカーブが少なく信号もない道を走っていると運転のための操作が少なく、さらに夜間やトンネルの中など視覚情報が少ない状況で長時間の運転を続けると催眠状態に陥りやすく、あるはずのない物が見えたりすることがあるらしい。

ひたすらまっすぐでどこまで行っても景色の変わらないナラボー平原はまさにその条件にぴったりなのでUFOを見てしまう人が多いのではないかと、自分なりに推察してみたりした。まあ、道が真っ直ぐでも、常に自分の足でこぎ続けている自転車では催眠状態も起こらない。

かくして、UFOを目撃することも追跡されることも無かったのだが、ほんのちょっとだけ、それが残念だったりもしたのだった。