さらはにズム ちくま論説 22/12

さらはにズム ちくま論説

▼屋代駅前通りの街路樹の落葉がたけなわだ。毎朝、店先の落葉掃きで商店街の皆さんは忙しい。掃いても掃いても際限がない。特にけやきの落葉ときたら「やっかいもの」だ。▼駅前通り商店街は40年ほど前に商店街協同組合を立ち上げ、商店街の近代化を目指して、まちづくりのためのTMO構想策定協議会を発足。その後、中心市街地活性化合意形成事業のなかで、街並みの景観整備に多くを協議し、商店街のメインの街路樹として、夏の緑陰の効果や冬の佇まいの美しさ、また「屋代」から「社」のイメージを醸す「けやき」の木を選定し、十数本植樹することに決めた。▼毎年、落葉の時期になると、20年前に植樹されたけやきの功罪について、決まって話題に上がる。落葉掃きと片付けの作業が大変だ、ムクドリなどの糞や鳴き声の野鳥の害が迷惑だとの苦情が聞こえてくる。一方、今夏のことだが、屋代駅に降り立った観光客がたわわに繁った街路樹に目を見張って感動していたそうだ。▼また、けやきにはこんな実話がある。市内寂蒔の天皇子(あまおうじ)神社の境内に、今もけやきの大木が悠然と鎮座しているが、終戦直後の事、大人たちが村の運営資金に充てるために、鎮守の森のけやきを処分することに決めたところ、これを知った少年団の子供たちは神社の木を守るために反対運動を起こしたのだという。大人たちは子供たちの真摯な気持ちを認めて以後区では手厚く保護し、おかげで今では千曲市の天然記念物に指定されている。▼けやきの存在を何とか有効活用して、住み良い環境のまちにしたいものだ。けやきの落葉を今朝も掃いていると落葉一枚一枚が語りかけているような気がして、良寛さんの句を思い出した。

 うらを見せ おもてを見せて 散るもみじ