しなの鉄道株式会社本社 街づくりで「しなの鉄道」の思いは 岡田忠夫専務に聞く 問われる「連携」の本気度

シリーズ未来への提案  駅とまちづくり

しなの鉄道株式会社本社 街づくりで「しなの鉄道」の思いは 岡田忠夫専務に聞く 問われる「連携」の本気度

地域の生活に電車を必要としている利用者は数多い。東北信の各地をつなぐ「しなの鉄道」は通勤、通学の利用者が多く、自家用車を持たない人にとって地域交通として必要となっている。高校生をはじめ学生の通学利用が約40%を占めている。新型コロナウイルスの感染拡大によって、しなの鉄道の利用客は減少、特に定期利用の顧客は1割程度、減ったという。しなの鉄道沿線に住む若年層の割合が減ってきている現状の中、コロナ後の駅を中心とした街づくりに寄与する活性化の具体策の実現が不可欠となる。街と地域、鉄道との「連携」について上田市に本社を置く「しなの鉄道株式会社」専務取締役・岡田忠夫さんに聞いた。

「ろくもんセンター」が移転する

 岡田さんは、「地域の鉄道は、イベントや駅舎の利用などを通して、沿線住民の方との結びつきが強い。特に駅を中心に街づくりの具体策を鉄道会社、住民、行政が連携して作り上げていくことが大切なことだ」と指摘した。その上で自治体、地域の企業をはじめ地域の商工団体、民間団体との連携については「名刺の交換などあいさつだけで終わってしまうこともあるが、人との繋がりをなるべく活かして、小さいことであっても次に進める行動を起こすことが本当に大事だ。そこからが始まりだ」と熱く語り、トップを含めた実行力の必要性を強調した。駅を中心とした街づくりに寄与している自治体などもあるなかで、まさに「連携」の本気度が問われている。

 岡田さんは三菱地所から、しなの鉄道専務に就き、地域の公共交通である鉄道経営に関わって4年となる。東京・丸の内の「新丸ビル」や「KITTE」などの都市開発や経済同友会で東日本大震災の後、被災地の復興で地元中小企業の支援として東京の大企業経営者との人的ネットワークづくりに取り組んだ経験もある現場主義の「行動」する経営者だ。工学博士の学位を持ち、都市開発・都市計画を専門として信州大学特任教授も務める。

 最近、新築となった御代田駅で地元の高校生や主婦の方々ら約30人と駅利用のアイデアを提案してもらう「対話集会」(ワークショップとして提案型の集会)を実施した。そこで高校生からは「駅の待ち合わせ時間に勉強できる環境やインターネットがつながる場所があれば利用できる」主婦からは「町民の特技が活かせるマッサージやネイル等の地域サービスができる場所があればいい」といったいろいろな意見が書かれたポストイットが貼られた。この「対話集会」は御代田町の熱意ある職員の尽力があって実現し、駅の活性化の具体化にはしなの鉄道と町が連携して取り組むという。

こうしたケースでは、牟礼駅がある飯綱町でも「しなの鉄道活性化懇談会」を設けて、町と地域住民の代表、北部高校の生徒らと鉄道が連携して取り組んでいるという。

 現在坂城町にあるのは坂城、テクノさかきの2駅。一方、千曲市には屋代、戸倉、屋代高校前、千曲と4駅が置かれているが、近く屋代駅が統括駅として、統括駅長が就くという。現在の屋代駅には、千曲商工会議所の協力による杏ジャムなどの加工品やそば、おやきをはじめ特産品などの販売するショップのほか、市役所管理によって、写真展や盆栽展などが催されるギャラリーがある。これまでしなの鉄道と市とで協議は続けているものの、現時点では特に具体的な活性化には発展していない。今後の再度の活性化に向けた具体策の展開が期待される。

4月から統括駅となる屋代駅 一方、戸倉駅には上田駅から「ろくもんセンター」が移転する