essay 東京だより(第1回) 森村たまき

essay 東京だより(第1回)

 こんにちは、イギリス生まれのユーモア小説家、P・G・ウッドハウスの翻訳をしております、森村たまきです。今回から東京でご活躍される同郷の方々との交遊録などを書かせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は母が千曲市森の出身で、以前は埴科郡森村といったそうで、結婚するときには父に、「母親は森村から来て、娘は森村に行くのか」と言われたものでした。今年の森の杏はどうだったのでしょう。そういえば満開の杏の花の間を長いこと歩いていないなあと、懐かしく思ってしまいます。

 さてと、第一回目は、去る二月十七日に御茶ノ水の東京ガーデンパレスで開催された東京鳩会総会・懇親会のお話をいたしましょうか。東京鳩会というのは東京在住の屋代高校出身者の会ですが、母校同窓会の東京支部ではない独立した団体で、私ももう十年以上、幹事の末席に連ならせていただいております。コロナ禍以来四年ぶりの開催ということで、母校からは赤地憲一同窓会長、馬場正一校長先生はじめご来賓にご列席いただき、また、昨年宝塚歌劇団をご退団された朱紫令真さんにもご登場いただけて『すみれの花咲く頃』を歌っていただいたり、賑やかで楽しい時間を過ごすことができました。

 さてとここで写真をご覧ください。右から赤地先生、私、朱紫さんと並んだ左端の紳士が、東京鳩会の幹事長、岡田正夫さんです。岡田さんは森のご出身で、長らく日商岩井に勤務された元商社マン。現役時代はマレーシアやハワイに計十年駐在されたほか、世界中を駆け巡ってご活躍されたそうです。高校で柔道部だったとか、横田河原の合戦はじめ郷土の歴史に詳しいとか、毎年杏の収穫手伝いに森に帰省していらっしゃることは知っていたのですが、商社時代の輝かしいご経歴のことは今回伺うまで私は全然知りませんでした。そういうところがお人柄なのです。私が杏の花や森の話をすると、とても嬉しそうにしてくださる、森愛を共有できる大先輩です。

 東京鳩会の幹事会はいつも自由が丘のとんかつ屋さんで開かれるのですが、議題の後は高校や地元愛を語り合って話は尽きません。このゆったり和やかな雰囲気はひとえに重見憲明会長と岡田幹事長のお人柄ゆえなのですが、重見会長さんのお話もしたいですね。では次回に。

著者紹介  森村たまき  翻訳家 内川出身