特集① 清泉女学院大 2027年「農学部」設置の計画発表  候補地は千曲市役所旧更埴庁舎跡地 来年4月共学化で清泉大に

特集① 清泉女学院大 2027年「農学部」設置の計画発表  候補地は千曲市役所旧更埴庁舎跡地 来年4月共学化で清泉大に

 長野市の清泉女学院大学は来年4月から共学化によって「清泉大学」となる。それに続いて同大は7月11日、2027年4月から千曲市に「農学部」を新設する構想を発表した。醸造や発酵を学んだ人材などを育てて地域の活性化につなげるのが創設の目的としている。

 開設するのは農学部アグリデザイン学科(仮称)。定員は80人。農芸化学コースと地域創成コースを設ける。農芸化学コースは長野県が強みとする味噌や日本酒、ワインなど発酵や醸造の発展やマーケット拡大に寄与する人材を育てるのが目的だ。

 一方、地域創成コースは、食料安全保障や農業の生産性の向上をはじめ、就農人口の減少など社会や地域課題への対応を課題としている。農と食に関連する地域の企業や自治体と連携して、6次産業化やバリューチェーンの構築などに取り組む人材の育成を目指す。

 キャンパスは、千曲市の旧更埴庁舎跡地を予定。敷地面積は約3760平方メートル。現在旧庁舎の解体工事を千曲市が進めている。実習に使用する農地やハウスなども千曲市内で確保する方針という。この辺りについては、千曲市が大いに協力できる。

 今回の構想については、昨年秋ごろに清泉側から千曲市に打診があったとされる。農学部の2学科創設が実現すれば千曲市内では初めての高等教育機関となる。千曲市の小川修一市長は田村学長らとの共同会見で「当市においても長年の悲願だった。地域の生涯学習の機会提供にもつながる。さまざまな波及効果を生み出す大変いい話をいただいた」と歓迎の意向を示した。

 清泉側は正式な認可は2026年を見込んでおり、学部再編などで特定分野への転換を図る大学に国が最大20億円を助成する支援事業にも選ばれている。清泉の「2027年度農学部構想」によると、助成金を得るための条件として、「地域における特定成長分野の人材を必要としている複数の企業と(新学部)の設置構想に関する事前協議を行う計画を策定すること」が挙げられている。

このため早い段階で農業・食品分野で長野県の中核となる企業の経営者と「新学部設置協議会」の準備委員会を?立ち上げて、協議会メンバー構成やテーマについて準備のための協議を行う。すでにこの準備委員会メンバーは決まり、協議を進めている。事業の採択が正式に決定次第、準備委員会を発足させて、今年度令和6年度中をめどに「清泉大学農学部設置委員会」をスタートさせる。

協議会は、農業従事者、北信の醸造系の企業経営者はじめ、清泉側関係者らをメンバーとする設置委員会で議論を始める。新学部での学習内容や実習の受け入れ先などについては有識者ら関係者らの助言を受ける。26年3月に校舎を着工し、同年8月に学生募集を始める計画だ。

 ここで千曲市はどんな受け入れの準備体制を整えているのだろうか。誕生して20年の千曲市。その前身の更埴市の庁舎はアスベストが建材で使われており取り壊しが決まり、庁舎の跡地は千曲市の駐車場となる予定だった。

◆千曲市の「受け入れ体制」は?

 「渡りに船」などと言われているが、そうではないようにしないと千曲市、ひいては市長の行政手腕が問われよう。受け入れ体制はどうなっているのか?

 市のやる気のある職員を部課を横断的に「選抜」して、チームをつくり、未来志向の受け入れ体制を是非整えてほしい。たとえば受け入れにあたっては、清泉側とよく話し合う場を設けることだ。

 例えば、街づくりの絶好のチャンスととらえて、自宅から通えない学生の寄宿舎の設定はどうするか。市内の「民間アパート」も借り上げて、少しでも学生の負担を減らせないか検討できないか。

 敷地については無償あるいは低料金による貸与かどうか。こうした支援を「選抜チーム」は清泉側とよく協議してほしい。

 現在、清泉側には数多のコンサルタントなどから「手伝わせてほしい」とリクエストがきているというが、安易にコンサルには頼らないでもらいたい。大概は高い報酬を求めてくるからだ。コンサルタントを使うにも、国や長野県など第三者によく相談したうえ本当に必要な場合を除いて、清泉側に市が協力する格好で自力で進めてほしい。

 このほか、来年6月に操業を終える日本デルモンテの長野工場跡地にについて、親会社のキッコーマンとの調整を千曲市は始めてみたらどうだろう。

 そして、将来農学部が開設した後に、地元の県立屋代南高校のライフデザイン科との「連携」も当然視野に入れてほしい。県教委はこうした地元千曲市の動きを真摯に捉えて、「地元のエゴで高校統合を妨げないでほしい」との理屈で屋代南高のライフデザイン科の存続を邪魔しないでもらいたい。

 また、地元選出の県議は何か動いてリーターシップを取ったのか?今からでも遅くないので、清泉側からよく話を聞いて、屋代南高校の存続に取り組んでほしいものだ。

 清泉女学院大学の田村俊輔学長は会見でこう力をこめて述べた。

「今の農業を何とかしなければいけない。(若者が)地域の新しい将来をつくるだけでなく、世界が直面する危機をチャンスに変えていく未来を夢見たい」

(本紙特任記者・中澤幸彦)

解体作業中の旧更埴庁舎

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 清泉女学院大学 (上野キャンパス:長野市)