おじょこな800字小説
第二十八回「天国か地獄」
作・塚田浩司
寂れた商店街の一角に有名なじいさんがいる。そのじいさんは占い師で、死後に天国に行けるか、それとも地獄行きなのかを占ってくれるらしい。徳を積んでいれば天国、人の道に背くような悪事を働いていれば地獄。それを見極めることができるとのことだった。
好奇心から俺は占ってもらうことにした。
「天国行きか地獄行きかを教えてください」
俺は感じの良い笑顔を心掛けて、じいさんに声をかけた。すると、じいさんは表情を変えずに言った。
「あんたは、天国行きだよ」
そう言われた瞬間、喜びは一切なく、むしろ興醒めした。人間離れした眼力が評判だったが、どうやらインチキだったらしい。なぜなら俺が天国にいけるはずがないからだ。おそらく俺の身なりや物腰の柔らかさに騙されたのだろう。これでは、俺が散々鴨にしてきた老人と同じだ。
そんな俺が警察に捕まるのも時間の問題だ。自業自得とはいえ、ここ最近は夜も眠れず、今にも壊れてしまいそうなほどの精神状態だった。

「天国行きですね。うれしいです。ありがとうございました」
俺は微笑むとじいさんを横切り、歩き始めた。すると、
「そっちじゃない」
じいさんが俺の背中に声を掛けた。さらにじいさんは続けた。
「警察署はそっちじゃない。あっちだ」
えっ! 俺の体が固まった。そして振り返り、
「わっ、わかってたんですか。俺が今までどんなことをしてきたかを?」
じいさんが首をこくりと振った。
「だったらなんで天国行きだなんて言ったんですか?」
俺は叫ぶように言った。こんな悪事を働いてきた人間は地獄に落ちるに決まっている。じいさんを見つめると、じいさんは包み込むような優しい表情で言った。
「おまえさんは罪を償い、悔いを改められる人間だよ。だからほらっ」
じいさんは俺が歩き始めた方向と逆を指差した。
罪を償い、悔いを改められるか。
俺はしばらく立ち尽くし、大きく深呼吸をしてから歩き始めた。じいさんの指差す方へ。