「出会い」と「別れ」を見つめ続けて60年  戸倉上山田温泉のシンボル的存在 戸倉駅前アーチ看板が撤去

「出会い」と「別れ」を見つめ続けて60年  戸倉上山田温泉のシンボル的存在 戸倉駅前アーチ看板が撤去

観光客を出迎えてきた巨大看板

 しなの鉄道戸倉駅前の名物だった「戸倉上山田温泉」アーチ看板が老朽化のため撤去された。温泉マークと「歓迎」の文字が印象的なこの看板は昭和31年ごろ設置されたもので、元々は温泉場にあった看板を作り直した二代目だという。経年劣化で金属の腐食が起きており、文字盤などの落下のおそれがあることから取り壊しが決まった。アーチの修復を求める声も強かったが、現在の道路交通法では県道上をまたぐアーチ看板の設置は認められていないため断念した。

感謝の「おつかれ様会」が開催

 3月1日には戸倉駅構内で「さよなら戸倉駅歓迎アーチ看板」と題したイベントを開き、戸倉上山田温泉の飲食店による豚汁や熱燗などの提供のほか、歓迎アーチ看板のキーホルダーを販売した。「駅そばかかし」も延長営業し、大勢の人が訪れて別れを惜しんでいた。イベントを企画した信州千曲観光局では市民から寄せられたアーチ看板にまつわる写真や塗り絵をまとめた動画を制作し、後日公開する予定だ。

雪のなか深夜の撤去作業

 看板の撤去作業は4日の終電後に始められた。時折雪が吹雪く悪天候のなか高所作業車を使って文字盤の取り外しなどが進められ、その後巨大なアーチの接合部分が切断された。深夜1時をまわるとロータリーの照明も消え、工事用のライトの中で慎重に作業が行われた。

 悪天候にもかかわらず最後の姿を見届けに訪れた人も。上山田温泉在住の山口民憲さんはカメラを手に看板の思い出を偲んだ。「このアーチは温泉を訪れた人の別れと出会いのアーチだと思う。何とか残していきたいけどこれも時代の流れで仕方ない」と最後の姿を写真に収めていた。

 クレーン車での作業は数時間に及び、アーチはワイヤーで吊り下げられ地上に降ろされた。アーチ部分はトラックに載せ切れないため一部を切断し、明け方に運ばれていった。

 現在は道路上を横断していた巨大看板は姿を消し、残っていた2本の鉄柱も後日撤去された。千曲市では今後アーチ看板に代わるモニュメントの設置を検討するという。