「戦国時代は何を残したか」
笹本正治・著 信濃毎日新聞社刊
戦国時代を扱った本やTVドラマが人気を溥し、英雄武将たちがクローズアップされている昨今だが、本書は戦国時代の民衆に視点をおきながら、戦国の世の社会実態を検証し、特に社会的弱者であった女性と子供に留意している。
そして戦国時代を経て、社会はどのように変化していったのかを探り、日本の歴史のターニングポイントであった戦国時代が、今を生きる我々に残したものは何かを、長野県立歴史館の館長が問いかける。
最終章には「現代に続く戦国時代の課題」と題して、特に川中島合戦を取り上げて、華々しく戦う信玄と謙信の影で、多くの命が奪われた戦争の悲惨な実態をフォーカスし、戦国時代の現象を現代の社会に当てはめて行かねばと、著者は力説する。今まで歴史は確実に進歩しているようにみえるが、良くなっているとは言えない。それぞれの人がそれぞれの立場で、それぞれの思いを馳せながら各時代を認識して、自分の興味ある時代だけを取り上げるのではなく、その時代々々を日本の歴史全体の中で相対化していくことが大切であると結んでいる。
価格1700円(+税)屋代西沢書店ほか県内書店で発売中。