歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
残暑見舞の絵手紙なども来ぬ晩夏静かに去りてゆくものひとつ
百合
絵手紙のグループなどが公民館活動として元気だった頃があり、地域の文化祭などでは多くの絵手紙が展示されていた。その年代の方も高齢となり活動も下火になっているか。残暑見舞いに絵手紙を届けてくれていた方からも来なくなった。下句の静謐な感慨の表現が秀逸。
【佳作】
盆休み元気な孫のはしゃぐ声聞こえてますか空のかあさん 甘利真澄
孫たちがお盆にやってきた。はしゃいでいる元気な姿に、作者は亡き妻に孫たちは元気だよ、聞こえるかいと心の中で話しかける。詠えそうで詠えない歌。率直な気持ちが歌になった。
【入選】
太陽が落ちて来たかと被爆者は原子爆弾それほどのもの 宮坂岩子
本棚の隅で見つけたシナリオに渋谷の小さきキネマの匂い 湯本孝一
はや一年まだ生きている今ここに口で言わぬが妻には感謝 小橋浩樹
薄紅の花を咲かせし駒草に幾度もくぐりし冠雪の季 中村邦久
我が家のやんちゃ坊主は帰京して庭のプールにトンボ飛び交う 中村妙子
本屋さんの小さな椅子に拠りかかり楽しいおしゃべりわたしの居場所 倉石みつる
境内の大百日紅を取り囲む盆踊りの輪絶えて幾年 つきはら
言の葉をSNSが枯葉にし焚火だ焚火落ち葉炎上 土朗
『短歌』(角川)9月号巻頭掲載の高野公彦の28首から二首。
七月の夕空に澄む水精を見つつ惜しみぬ「綱手」終刊
しろがねもくがねも良けれ人間のいのちより湧く歌貴しよ
【応募要領】
■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)
■住所・氏名・電話番号を付記
■締め切り毎月十日
■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係