特集① 「輝く未来を奏でるまち」 坂城町の令和7年度予算 ◆宿場町の仕組みを 取り込む「新複合施設」
3月議会で可決された令和7年度の坂城町の当初予算は前年比10.1%、6億9000万円増の75億円。過去最大規模の予算の主な事業として町では6つの基本目標を掲げている。その一つ「健康でいきいきと暮らせるまちづくり」では、老朽化した老人福祉センターと保健センターを統合し、子育て支援機能などを併せ持つ「新複合施設」の建設事業に8578万円が充てられる。7年度は6年度にまとめた基本設計をもとに実施設計を進める。
交流拠点としての新複合施設
一昨年4選を果たした山村弘町長が強く訴えてきたのが、少子高齢化対策の拠点づくり。その本丸がこどもから高齢者まで世代を超えた町民が集う「新複合施設」だ。現在の老人福祉センターから図書館駐車場までのエリアに令和8年度に建設される計画となっている。昨年8月には基本設計業務委託のプロポーザルが行われた。そこで選ばれたコンセプトが、住民の交流やつながりを生むための仕組み『曲尺手(かねんて)』の導入だ。曲尺手は古くから宿場町で用いられた町の構造で、道を曲げることで多くの店舗や民家を配置し、商業活動を活性化させた。北国街道随一の賑わいを誇った坂木宿の歴史を持つ坂城町に相応しい提案と言えるだろう。施設の建設予定地は市街地エリアの中心に位置し、「図書館・格致学校」や「体育館・文化センター」「地域活動支援センター」 といった周辺施設との一体活用によって交流や相乗効果を生み出すことが期待されている。なお、建物も1階建ての階段やエレベーターがないバリアフリーの造りで、各施設は屋根で繋がっているため天候の影響を受けずに移動できる構造となるという。
3月28日には新複合施設基本設計の住民説明会が開催された。今後も別途町民への意見聴取を実施する予定。
高齢者・子育て世代への支援
令和7年度の新規事業の特色の一つに高齢者や子育てへの支援がある。高齢者には帯状疱疹の予防接種、補聴器購入助成が盛り込まれた。一方で、坂城町には共働き世帯が多い点を配慮してベビーシッターの利用補助金が新たに予算化されている。町内には正式な資格を持ったベビーシッターがいないため、上田市や千曲市などのベビーシッターを利用した場合は交通費まで補助する方針だ。
暮らしの基盤づくりでは交通や情報インフラの整備を進めていく。公共施設のスマートロック(電子錠)導入などのデジタル化(4249万円)などを予定している。6年度末まで実証実験を行ってきたデマンド交通タクシーの本運行(1520万円)も始まる。
小中学校の改修工事&DX推進
基本目標の5番目に掲げるのが「未来へつなぐ子育てと学びのまちづくり」。6年度は坂城中学校のトイレの洋式化工事(1320万円)を進める。さらに村上小学校体育館前の舗装や、坂城小学校大プールのろ過機の改修が計画されている。
GIGAスクール学習用端末は更新時期に当たるため、リース会社と契約を結ぶ。南条小学校では大型表示装置の更新が行われる。
新旧イベントの実施も
商業振興として複数のイベント事業も計画されている。「さかきモノづくり展」は4年ぶりにさかきテクノセンターで開催(10月3~4日予定)。前回の令和3年(2021)はコロナ禍でオンラインのみでの開催だったが、企業や大学のブース出展が復活するとのことだ。
このほかにもONSEN・ガストロノミー事業への補助金を初めて計上。これはその土地のガストロノミー=「美食」に触れることを目的としたツーリズムと、日本の温泉文化を融合させた新しい試み。11月に坂城駅周辺から歩きながら坂城大橋を渡り、食を楽しみながら「びんぐし公園」で温泉に入るという企画を実施する計画だという。すでに例年5月には坂城駅前葡萄酒祭(ワインマルシェ)を開催しているが、さらなる集客の拡大につなげる狙いだ。
令和7年度は坂城町第6次長期総合計画の折り返し年になる。『チャレンジSAKAKI』の“輝く未来を奏でるまち”づくりの挑戦が続く。
(取材・白石茂樹)
新複合施設イメージ図
新複合施設建設委員会資料より抜粋
(今後の協議により変更の可能性あり)




