歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
再会を期してベッドにふりし手よミモザの里は永遠に叶わず
百合
病気療養をしている友人を見舞った作者。春になったら前に一緒に行ったあのミモザをまた見に行こうね、と手を振って別れたが、その約束は叶うことはなかった。ミモザの黄色の花房。ミモザの花言葉は「思いやり・友情」。亡き友への哀惜に満ちた挽歌。
【佳作】
寒ざらしは次男の嫁の郷の食島原の地をまた訪ねたし
湯本孝一
作者の次男の方は島原の女性と結婚された。作者も島原を訪れたことがあり、そこで寒ざらしというものを振舞われた。寒ざらしは、白玉粉で作った団子を「島原の湧水」で冷やし、蜂蜜、砂糖等で作った特製の蜜をかけた島原伝統のスイーツのようだ。次男の方のおかげで遠いところの伝統甘味が堪能できることに感謝の作者。人生の味わい。
【入選】
参道の枯れ枝掃きつつ思い出す杖つき休み登りし母を
中村邦久
虫たちも穴から出たり入ったり地球おかしい馴れてはいかん
土朗
仏壇に手を合わすたびストレッチひと冬過ぎて微かに成果
つきはら
プライドのつんと澄ましたワープロ字どこそこ味あるわたしの手書き
倉石みつる
畑荒らすイノシシの害憂う友柵抜け走るうりぼう楽しや
甘利真澄
除雪車のエンジンかき消す猛吹雪独り呟くこりゃひでえな
小橋浩樹
寒いから出るのはイヤと爺は云い本とテレビのこたつ人間
那賀吉弥
前回に続き、高野公彦(1941~)の最新歌集『水の自画像』から一首鑑賞したい。
この国にまだ詠まれざる歌あらむ良き歌あらむその歌詠みたし
【応募要領】
■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階
ちくま未来新聞 歌壇係