中条唯七郎「本家日記」 千曲市への寄贈を実施

中条唯七郎「本家日記」 千曲市への寄贈を実施

江戸後期に埴科郡森村で名主を務めた中条唯七郎が書き残した記録を翻刻した「本家日記」が刊行され、編纂した中村芙美子さん(東京在住)が千曲市に寄贈を行った。中条唯七郎は安永2年(1773)の生まれ。文化14年(1817)から弘化4年(1847)まで30年余りにわたり村の出来事や社会の変化を書き留め続けた。中村さんは69巻全93冊に及ぶ膨大な古文書資料を10年余りかけて翻刻。自費出版で全六巻の「本家日記」として刊行した。

 中条唯七郎が記録を残した時代は天保の飢饉(1833年~1837年)の起きた年代に相当する。地方にも貨幣経済が浸透して、村の共同社会が維持出来なくなっていく転換期に当たるという。県文化財保護協会更埴支部長の柄木田文明さんは、この時代に村が「大人組」(富裕層)と「貧乏組」に分かれ、格差社会が生まれたと分析する。幕府や藩からの命令への対応なども克明に記されており、近世における農村の歴史を知る上での基礎資料となっている。中村さんは「この日記から何かをつかみ取って、それぞれの人たちがどんなふうに生きれば良いか考えてもらえれば」と話す。

 「本家日記」は市内図書館、中学校・高校のほか、県立図書館や坂城町の図書館など全26か所に30セットが寄贈される。

贈呈式の様子(9月8日) 翻刻を行った中村芙美子さん(右)

県文化財保護協会更埴支部長・柄木田文明さん(左)