おじょこな800字小説 第四十七回「伝説の写真機」 25年5月

作・塚田浩司(柏屋当主 屋代出身)おじょこな800字小説 第四十七回「伝説の写真機」  写真機がこの国に登場した当時、写真機は人の魂を吸い取ると恐れられていた。現代人は鼻で笑うだろうが、あながち間違い

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ひなた短編文学賞 大賞受賞 わたしとシーグラス 相生たおず

ひなた短編文学賞 大賞受賞 わたしとシーグラス 相生たおず  年の離れた姉とともに、わたしは砂浜を歩いていた。昼下がりの海は穏やかで、春の陽射しを受けて、きらきらと眩しく光っている。 「懐かしいな、こ

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第四十四回「同級生」 おじょこな800字小説 塚田浩司/柏屋当主。屋代出身。

 小学校時代の同級生の和也と二十年ぶりに会うことになった。SNSで名前を見かけた俺の方から声を掛けた。喫茶店で再会を果たしたのだが、会うなり和也は嬉しそうに「久しぶり」と俺に満面の笑みを浮かべた。昔と

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第四十三回「鈍感な男」 作・塚田浩司 おじょこな800字小説 「ねえ、私を見て何か気づかない?」

第四十三回「鈍感な男」 作・塚田浩司 おじょこな800字小説 「ねえ、私を見て何か気づかない?」  夕食中、妻に 訊かれ、正樹はドキッとした。正樹は昔から鈍感だった。妻が髪を切っても買ったばかりのスカ

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おじょこな800字小説 第四十二回「はじまりの水」塚田浩司 

おじょこな800字小説 第四十二回「はじまりの水」 「中学校の水道の水を飲みに行こうぜ」  突然、宮本からこんなラインが届いた。奇妙なラインだとは思ったが、今のアイツの状況を考えると断る気にはなれず、

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おじょこな800字小説 第四十一回「詐欺だけに」 塚田浩司/柏屋当主。屋代出身。

おじょこな800字小説 第四十一回「詐欺だけに」 「このところ犯罪が横行していまして、その犯罪グループのリストの中におばあちゃんのお孫さんの名前があったんですよ」  警察官役の俺が、お婆さん役の笠置に

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第四十回「恵方巻きの効果」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第四十回「恵方巻きの効果」  今年の恵方は東北東だ。俺はさっそく東北東に向き恵方巻きにかぶりついた。恵方巻きは願いを思い浮かべながら無言で食べる。俺の願いは「ステ

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十九回「アンとわたし」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十九回「アンとわたし」  私のふるさとに夫と一緒にUターンした。大学進学のときに地元を離れて以来だからこの町に住むのは五十年ぶりだ。屋代駅前通りもすっかり変わ

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十八回「刺身の盛り合わせ」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十八回「刺身の盛り合わせ」  大晦日。東京から帰郷する俺のために、母が腕をふるって料理を作ってくれる。唐揚げにハンバーグにフライドポテトなど子供が好きなものば

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おじょこな800字小説 第三十七回「ネクストバッター」作・塚田浩司

おじょこな800字小説 第三十七回「ネクストバッター」 作・塚田浩司  野球部の仲間の洋介が結婚する。めでたい話だが俺は素直に喜べない。 三ヶ月前、勤め先が倒産した。まったく予期していなかった俺は一気

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十六回「サプライズ」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十六回「サプライズ」  結婚前から、あらゆる場面で妻にサプライズを仕掛けてきた。  初めて誕生日を祝ったときは打ち上げ花火を上げた。プロポーズの際にはケーキの

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十五回「電話でお金詐欺」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十五回「電話でお金詐欺」  老人はかつて名の知れた会社の社長だった。裸一貫から会社を立ち上げ、「工夫しろ」を社訓に会社を成長させてきた。しかし、老人が手塩にか

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第三十四回「指紋」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第三十四回「指紋」  いつからだったか、買い物をする際の現金決済がほぼなくなり、国民の大半はクレジットカードか、電子マネーを利用するようになった。しかしここ数年

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第三十三回「富豪と結婚」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第三十三回「富豪と結婚」  彼は齢九十を超えていたが、金、地位、女。欲しいものは全て手に入れることで有名な大富豪。その彼が今欲しいのは私だと言う。 「幸せにする

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第三十二回「五人囃子」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第三十二回「五人囃子」  山城さんが辞めた。山城さんはうちの工場に親父の代から務めていて、人柄、知識、技術とどれもとってもなくてはならない人だった。しかしもう七

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第三十回「自信」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第三十回「自信」  俺は若者世代のリーダーと呼ばれている。大学卒業後すぐにIT会社を設立し、業績も好調。その実績から、全国各地から講演に招かれるまでになった。講

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 第二十八回「天国か地獄」 おじょこな800字小説 作・塚田浩司

おじょこな800字小説  第二十八回「天国か地獄」 作・塚田浩司  寂れた商店街の一角に有名なじいさんがいる。そのじいさんは占い師で、死後に天国に行けるか、それとも地獄行きなのかを占ってくれるらしい。

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第二十七回「赤ちゃん返り」

おじょこな800字小説  第二十七回「赤ちゃん返り」 作・塚田浩司     両親が「たっくーん」と猫撫で声をだしながら俺を嬉しそうに覗き込んでいる。いつもは呼び捨てなのに変だな。しかも、おかしいのはそ

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第二十六回「散骨」

おじょこな800字小説  第二十六回「散骨」 作・塚田浩司    雅美は白い小瓶を開け、その中身を海に放った。白い塊が海に落ち、白い粉が辺りを舞った。雅美は水面がわずかに揺れるのを見ながら手を合わせた

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ちくま800字文学賞 受賞作 発表  佳作受賞作「縁合い」 なぎさ奈緒

ちくま800字文学賞 受賞作 発表  佳作受賞作 「縁合い」  なぎさ奈緒  私の故郷にはある言い伝えがある。  カラスの多い夜は特別な夜店が立つというものだ。子供のころ、一度だけ訪れたことがある。

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 『第一回 ちくま800字文学賞』 佳作受賞作「非対面型怪奇モデル」 エビハラ

 『第一回 ちくま800字文学賞』 佳作受賞作 「非対面型怪奇モデル」  エビハラ  2020年某日、夜。郊外の公会堂に集まる人影があった。  長い黒髪を靡かせ、大きなマスクをした女性の集団は、係員に

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ちくま800字文学賞 大賞受賞作「嘘を八百」  田原にか

ちくま800字文学賞 大賞受賞作 「嘘を八百」   田原にか  満月の夜、壮太は美優の言葉を思い出していた。 「人間は一人の相手に対して、800までしか嘘がつけないの。だから嘘を800回言いあおうよ。

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第二十五回「年齢制限」

おじょこな800字小説  第二十五回 「年齢制限」 作・塚田浩司    学校へと歩いていると、一台の車が俺の横に停まり、運転席の窓からクラスメイトの五十嵐が顔を出した。  「乗っていくか、そのペースじ

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司  第二十四回「さよなら我が家」

おじょこな800字小説 第二十四回 「さよなら我が家」 作・塚田浩司    住み慣れた我が家を離れるのは寂しい。わたしは家の中を歩き回りながら、家の隅々まで目に焼き付けようとした。  居間の柱には無数

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おじょこな800字小説 ・塚田浩司 第二十二回「虹色の戦争」

おじょこな800字小説 第二十二回「虹色の戦争」 作・塚田浩司  「戦争反対ー。戦争反対ー」  おじいさん、おばあさん、おじさんに、おばさん、お兄さんに、お姉さんが平和を願ってデモ行進をしている。中に

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