◆中心市街地の活性化に結び付くか 特集② 動き始めた街の現場

◆中心市街地の活性化に結び付くか 特集② 動き始めた街の現場

 しなの鉄道屋代駅近くにあった空きビル(駅前ビルCODY)の解体工事が7月初めから始まったが、7月20日には、ほぼ解体を終えた。解体工事の開示看板によると、解体業者は松本から来ているようだ。近くの人の話では、「大手企業がアパートを建てると聞いている」という。想像するに2年半もすれば、清泉大農学部が旧更埴庁舎の跡地に開設する。一学年85人の学生の一部の入居を見込んでのアパート建設だろうか。何ができるのか、建築工事の内容の開示を待ちたい。

 千曲市では中心市街地活性化について単独の計画を立てたが、殆ど実現できなかった。こうした民間企業や事業者の計画のような新たな現場の動きをぜひ取り込んで、街の活性化につなげてほしい。

★現実味のある「構想」づくりを

 市が自ら現場調査してコンサル依存の脱却を

 千曲市は、国土交通省が2023年に新規の事業として決定した屋代に整備予定の(仮称)上信越道屋代スマートインターチェンジ(SIC)の近くに「交通拠点」を整備するとした基本計画案をまとめて公表した。

 千曲市のホームページや信濃毎日新聞の報道によると、市が構想としているSICと同時の供用開始を目指してアクセス道路沿いに設ける「交通拠点」は約0.8ヘクタールの土地に、SIC設置に伴って現在は高速道路の本線上にある高速バス停を移設するもの。民間事業者による周辺地区の開発構想があり、市は交通拠点の機能を充実させて地域の活性化につなげたい考えだ。

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 「交通拠点」は高速バスのバス停の移設先になるほか、市内循環バスやタクシーの乗り入れを想定している。「道の駅」のような飲食・物販や、市民の滞在にも対応できる「休憩・交流施設」を設ける。市内だけでなく「信州のゲートウェイ(玄関口)」を目指すという。

 事業費は、税抜きの概算で6億~7億円。財政負担を抑えつつサービスの向上を図るため、建設や運営、維持管理には「民間事業者」の資金や経営能力の活用を想定している。交通拠点の現時点でのイメージ図も公表した。計画案は交通拠点を起点に「市内や県全体に人の流れやにぎわいを拡散する」と説明。「地域住民、国内旅行者、外国人観光客らが多様な使い方を柔軟に選択できるような整備を計画する」としている。

 こうした計画は千曲市が独自に練ったものだろうか、コンサルタントの提案計画に頼ってはいないだろうか。市が市民の意見をよく聞いたうえで計画に反映して、市が自ら調査した計画を提案してほしいものだ。

◆市民からの意見をよく聞いて計画に

 ここで「交通拠点」を提案した理由を問いたい。現在、高速バスの本数や乗客数はどれくらいあるのだろうか。こうしたデータの実数と今後の見込みはどうなるかを示してほしい。

 この地区ではかつて大型商業施設の誘致のために千曲市が招致活動を展開したが、実現しなかった。民間事業者の資金や経営ノウハウを活用するとしているが、関心のある企業はどれくらいあるのだろうか。

 計画案は市ホームページに掲載し、7月30日までパブリックコメント(意見公募)を実施。市は意見公募を踏まえ、年内に基本計画を策定する方針だが、締め切りを8月いっぱいに延ばすなどして、よく市民の意見を聞いてほしい。決して「拙速」にすることはない。

 民間事業者の公募は2027~2028年度ごろを想定しているならば、その前に市議会をはじめ、市民やまちづくり団体などとの協議を重ねて、「交通拠点」だけでない構想も示してもらいたい。納税している市民が納得する計画がまとまるまで焦って進めることはなかろう。

(本紙特任記者 中澤幸彦)

解体が進んだ屋代駅前のビル跡地

信州そばとおろしうどんの「科野」(しなの)の看板が残っている  

         (7月20日撮影)