◆自然災害は忘れたころに 日ごろの準備が大事 市議選では防災でも知恵をアピールを

◆自然災害は忘れたころに 日ごろの準備が大事 市議選では防災でも知恵をアピールを

 元日午後4時過ぎ、正月気分が一気に冷めてしまった。千曲市でも大きな横揺れが二度にわたった。テレビには速報が入り、「石川県の能登半島」が震源地とわかった。津波が襲ってくる恐怖があり、アナウンサーは「津波が来る。高台にすぐ避難して」と何度も叫んでいた。災害は忘れたころにやってくる。能登半島地震から3か月半が過ぎた4月17日深夜、今度は愛媛・高知を震度6弱の強い地震が襲った。豊後水道が震源という。

 「災害は頻繁に起きている」というが、自分が住んでいる地域に直接被害がないと実感が薄くなってしまう。しかし、2019年(令和元年)10月12日に長野県の北信、東信を襲った台風19号の「雨台風」による水害は忘れられない。

 この豪雨によって千曲川は各地で堤防が決壊した。長野市長沼地区では被害が拡大した。千曲市では越水して、霞堤の開口部からの出水によって、杭瀬下から粟佐一帯にかけてと千曲川西岸の八幡も床下・床上浸水の洪水被害に遭った。西船山通りの住宅や店舗では家屋への被害や自動車への被害も大きかった。翌日には被災した各家で、泥を掻き出したり、水で洗い流したりして畳を上げている家もあった。新しい千曲市役所庁舎の1階の玄関あたりでは、土嚢を並べて浸水するのを防いでいた。

 この時から5年が経過し、千曲市での対策はどう進んでいるのかを見てみる。

 令和5年度までに千曲川の堤防強化と河道の掘削、本年度から令和9年度まで、埴生遊水地(新田地区)と平和橋遊水地(八幡地区)整備を行うための用地買収を進めていた。埴生遊水地内に建築物の地権者の協力で土地買収が進み整備される見通しだという。こうしたインフラ整備についての実績を市議選でアピールすることはわかるが、もっと他に主張することがあろう。

 5年前の2019年10月12日深夜の千曲市の増水について当時の岡田昭雄市長の定例会見を信濃毎日新聞の記事から主な内容を以下に引用してみる。

 岡田市長は10月29日の定例記者会見で、台風19号による千曲川の増水で同市杭瀬下の市役所新庁舎一帯が冠水した理由について、千曲川に架かる千曲橋と平和橋の間の「霞堤(かすみてい)」が「要因の可能性が高い」との見解を示した。想定を超える水位上昇で、堤防が部分的に切れた状態の霞堤部分から水が流入したと指摘した。

 国交省北陸地方整備局(新潟市)も同日の信毎の取材に「千曲川の増水により堤防から越水する場所が相当数あり、霞堤の設計を超える水が流れ、あふれた」とした。

 霞堤は枝状になった堤防で、川の上流に向かうほど本流から離れる。川の上流部で堤防が決壊した場合、堤防の外に流れ出た川の水を再び本流に導く機能がある。堤防の不連続部から水が逆流して一時的に水をためる遊水池としての効果もあるとされる。

 市によると、12日午後7時半ごろには、平和橋から東側の市中区一帯での冠水を確認。あふれた水が県道や市道千曲線を伝って流れ、市役所一帯が冠水したとみられる。

 北陸地方整備局によると、この霞堤は国が千曲川の河川整備をした1918(大正7)~41(昭和16)年の間に造られ「伝統的な優れた治水工法」とした。

 国交省の杭瀬下水位観測所では12日午後9時50分に千曲川の水位が6・4メートルに到達。1959年8月14日に観測したこれまでの最高水位5・2メートルを上回った。

 震度5強を観測した千曲市の姉妹都市の愛媛県宇和島市は震源地となった豊後水道の近くだ。お見舞いとともに、防災対策で連携できることはないか市議や行政は検討しているのだろうか。

 同じく姉妹都市である富山県射水市は元日の能登半島地震では、重軽傷者4人、住宅の被害は全壊13戸、半壊50戸、一部損壊は2400戸を超えた、特産品を購入促進する支援は千曲商工会議所などを通じて行われたが、防災面での連携の具体策を提示してほしいところだ。例えば、避難所について射水市からの知見を得ることはどれくらいしているのだろう。4月3日に発生した台湾での地震の避難所と比べても、日本の避難所はプライバシーが守られない環境となっている。簡易テントが必要なら、研究してみればよいだろう。5年前の洪水の際は、市役所は堤防越水の被害にさらされて避難場所としては機能しなかった。地震の避難所については、千曲市は地震による建物被害、河川の洪水による浸水想定区域や土砂災害の危険性のある区域、避難所等を確認することができる千曲市防災ガイドブックの見直しを行ったという。

 防災には個々の家庭や会社などでの対策が重要である。しかし、このガイドブックをどれだけの市民が開いているだろうか?千曲市は防災ガイドブックを見る機会を、せめて3・6・9月の3か月に一度、地域住民が参加する「避難訓練」の場でしっかりと計画したらよいだろう。「街灯が暗い」といっても動かない市議はもとより、行政には期待できない千曲市であってはならない。

(本紙特任記者 中澤幸彦)

令和元年東日本台風による災害ゴミ(2019年11月 戸倉グラウンドの集積所)

水が引いた直後の千曲市庁舎(2019年10月13日)

◆防災対策でも連携を  知恵を出し合おう