特集1 千曲市の図書館④ 学びの場の復活を目指して 図書館司書の実情は

 特集1 千曲市の図書館④ 学びの場の復活を目指して 図書館司書の実情は

 「どうしたらいいだろう」。天気がいい日には外に散歩に行きたくなる。ちょっと外に出て深呼吸をしてみよう。気分がよくなったかな?少し歩いてみよう。知っている人に会うかな?田舎だから、昼間はあまり歩いている人はいない。学校の方にいってみようかな…知っている先生やクラスメートに会ったらどうしよう。なんて言おうかな。まあ図書館に行って好きな漫画を読もう。ドラえもんかアンパンマンの単行本があったかな。面白い本があるかどうか図書館の先生に聞いてみようかな。

 「図書館に着いたら、図書館の先生と話そうかな。あの先生なら僕の話を聞いてくれるかもしれない…きっと聞いてくれる」。学校になじめなくて最近、学校に行っていない子どもがいる。

 人の人生はいろいろです。楽しい時ばかりではなくて、辛いことや苦しいことも多い。ひとりで悩むのはつらい…そんな時は知っている誰かに話をしてみたらどうだろう。もしかしたら、少し気持ちが楽になるかもしれない。学校には、体調が悪かったりしたら保健室がある。悩みを少し聞いてくれる先生がいるのは図書室ではないかな。

 今年3月に長野県教育委員会がまとめた第5次長野県子ども読書活動推進計画によると、信州全体での子どもの読書活動推進の方策として、「地域における子どもの居場所として機能する場や学校以外の多様な学びの場と連携協力した取り組み」と併せて「学校に行きづらいといった様々な状況にある子供たちが本と出合い安心して居られる場所としての図書館づくり」を盛り込んでいる。

 具体的な取り組みも県内で進んでいるようだ。信濃教育会の関係者も「新しい図書館像は模索されており、学びの場としての図書館は県内でも様々な取り組みが行われている」と語る。

◆図書館司書の待遇改善を

 学校図書館の司書として働いている方たちは、たぶん本が好きで司書になった方が大多数だと思う。仕事自体には満足しているのだろうが、学校司書は非常勤(会計年度任用職員)で決して待遇が良いとはいえないのが現実だ。

 一般的に会計年度任用職員の給与はキャリアを積んでも一般職員と比較すると低い。待遇が改善されず、不満の声もあると聞く。千曲市立の小中学校の図書館司書の方も会計年度任用職員である。

 国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者の平均年収は約460万円という。この数字と比較すると、公立図書館司書の給与水準は平均よりもやや低めである。ただし、学校図書館勤務先の種類や雇用形態によって収入には差がある。採用枠が限られており、公立図書館などで正規職員として勤務する場合は、賞与や各種手当を含めて安定した収入が見込めるのだが…。

◆「教室以外に子どもの居場所を」

 総合雑誌「世界」(岩波書店)10月号で「学校にも図書館がある――子どもの居場所に人と本を」という記事が掲載された。

 筆者は木下通子さん?(オフィスみちねこ代表・社会教育士)は「子どもと本の出会いの場として、子どもが安心できる居場所として学校図書館は欠かせない存在だ。だが無人の図書館ではその機能を果たせない。専任で専門性をもった正規の職員を配置して職員会議や学校行事を通じて子どもたちの様子を知り、教師と対等の立場で授業に対応したり、子どもたちと接することができることが必要だ。中学校、特に義務教育学校の図書館に本と子どもたちのことがよく分かる専門性をもった一校専任の司書の配置を望む」と指摘されている。

 埼玉県立浦和第一女子高校で図書館司書を務められた木下さんは、現場をよく知っている。千曲市でもぜひともこうした学校図書館司書を配置してほしい。いないことはない。いなければ育成する気概を千曲市には求めたい。

(本紙特任記者 中澤幸彦)