「上山田温泉物語」 第18回 有限の温泉資源

「上山田温泉物語」 第18回 有限の温泉資源

 温泉は地下から無尽蔵に湧いてくるイメージをお持ちの方が多いと思います。

 戸倉上山田温泉での源泉井は、第16回にも書いたように熱せられた頁岩層(別所層)に出来たクラック(ひび割れ)を流れる湯脈より出ています。

 湯脈にあたると掘削した井戸の中に先端に小さな穴を沢山空けたケーシングパイプというパイプを挿入します。湯脈から出た温泉はその穴からパイプを通って地上に向けて昇ってきます。上山田温泉株式会社では地下50~80㍍ぐらいでその温泉を水中ポンプで地上に汲み上げます。

 これでポンプが故障しない限り温泉は永久に出てくる理屈になりますが、ポンプは摩耗や砂を噛んで故障します。またケーシングパイプの途中に穴が空き冷たい水が混入します。これにより湯温が低下します。この場合スクレーパーという器具を使いパイプの内側に付着したスケールを削り取り、内径の小さいパイプを最初のパイプの内側に挿入します。

 水が混入しないよう隙間に蓋をすると再度最下部から熱い温泉が湧き上がります。

 温度は維持できますが、湯量はパイプが細くなった分減少します。このため年数が経過するに従い湯量が減少するのです。

 また乱掘は温泉の湯量、温度、成分に悪影響を及ぼすことがあり、温泉法により温泉の掘削は制限され長野県の許可が必要になります。温泉は有限で大切に保護されている理由です。

(上)源泉1は井戸のケーシングに穴が空いて水が混入 二重ケーシングにして温度を確保

(右)源泉2はケーシング内部のスケールを落とす     

(左)源泉3は井戸の沈殿物を除去する