「漱石と鉄道」
牧村健一郎・著 朝日新聞出版刊
小紙第8号の「おじよこな800字小説」に漱石の「アイラブユー」の訳の逸話を紹介していたり、長野漱石会の代表が稲荷山在住の方だったりで、今回は「漱石と鉄道」を取り上げた。
夏目漱石の作品には鉄道が矢鱈と登場する。
「三四郎」、「坊っちゃん」、「心」、「草枕」などいずれも汽車の旅が出てくる。この本は漱石が生涯を通して実際に体験した国内外の鉄道の旅を、路線ごとに紹介し各作品と関連させてページを進めている。信越線の章では、漱石が信州に明治44年6月と大正元年の二年連続して信越線を利用していることが詳説されている。
それによると漱石は明治21年に開設された屋代駅を二度通過していることになる。(二度目の帰路は姨捨駅も)。そのほか道すがらの様子も詳しく、当時信越線で最大の難所・碓氷峠のアプト式レールや26のトンネル、日本で最初の幹線電化などが、当時の写真やマップで紹介されている。また、漱石夫妻が眺めたであろう、横川駅から見えるレンガ積みの「めがね橋」や、軽井沢駅では大好きな日本そばを立ち食いした漱石の様子が記されている。
長野市の篠ノ井がルーツと言われている夏目漱石がますます身近に感じさせてくれる一冊
価格1700円(+税)屋代西沢書店ほか県 内書店で発売中