さらはにズム ちくま論説
▼昨年の暮、千曲市出身の書家、故・松林天上さんのご息女松林女(かんな)さんより端正なハードカバーの写真集をいただいた。表紙の中央に、「天上作品集」とご本人の楷書がくっきりと座っている。添え状に、「私達も父を送ってから早四十年を超え、父の逝った年齢になってしまいました。この度、父の遺品などを整理し、記念に作品集を出版することに致しました。掲載した作品は、殆どが自宅にあるものですが、昔をしのびご笑覧いただければ幸いと存じます。」とあった。▼作品集の巻頭は、晩年に親交のあった桑原龍洞院住職(現・曹洞宗大本山永平寺第八十世貫主)南澤道人さんの心の籠った追悼文で、末尾に七言絶句の漢詩が偶作されている。
偲 天上先生 偶作
天上老翁常作詩 多年日月弄神思
七言端麗温情趣 文外幽懐見大慈
道人叩頭
▼巻末は松林女(かんな)さんの、「父の「煮雲荘」」というエッセイと短歌で、作品集が収まっている。かすみ食む暮しに父がこの家を「煮雲荘」と呼び余生送りぬ 口を開けば即ち「王義之、王献之」父あこがれの書がここにある びっしりと付箋つきたる「五體字類」父の書棚に三冊遺る 蚕室を直しし父の書斎埋むる我が家の宝 文房四宝▼天上さんに関する本は、ほかに「さらしなはにしな千曲文化Vol.4 松林天上篆刻と書と漢詩」がある。天上先生の作品、千曲市の公共施設などに展示されておりますので、見て歩きして探してみてください。
千曲市には宝物がいっぱいだ!