さらはにズム ちくま論説 25年1月
▼千曲市の伝統的な行事がまたひとつ消えそうだ。八幡おはちまんさんのお田植え祭(お田植え遊び)だ。昨年の暮れに神社に電話でお聞きしたら「来春はやらないんだよ」と寂しげな声が返ってきた。久しぶりに参加しようと期待していたのでがっかりした。
▼あれはかれこれ40年前になるか、新春の正月5日、当時の宮司・松田千里さんからお呼ばれ頂き、旧知の二人と連れだって、夕刻から松田家で催される「お日待ちの神事」に参加した。天照大神を祭る神事のあとの酒席で松田宮司のことばが懐かしい。「お田植え遊びというのはね。アシタの朝、お日様が上がるまでにやればよろしい。あわてちゃいけない。朝まで呑み明かす、そしてご来光を拝む。お田植え遊びはその間にやるんです。昔はどこでもやる素朴なものです。大頭祭(新嘗祭)に続く予祝の祭りです」
▼お田植え祭は民族神事芸能として稲作農民により伝承されてきたのだ。酒席が一段落すると、宮司宅から武水別神社の拝殿に、お日待ちの客の中からのお田植えのトウドと神官が移動して、いよいよ、お田植え遊びが始まる。「苗代見立て」「スジマキ」「草刈り」「畔のカワムキ」「水口まつり」「畔ぬり」「しろかき」そして「お田植え」と続き、「やれやれ、ごくろうでした。よく植わって青田にかわりした。これでまあ、豊作は間違いねや。あとは、お八幡さんにおまかせするだ」
▼昨年は、言わば「にわか米不足」が起きたが、日本の未来にとってお米の自給不足に警告を鳴らしているのかも。米は日本の文化だ!そして文化は地方創生のキーワードだ。