さらはにズム ちくま論説

さらはにズム ちくま論説

▼新型コロナ感染症の影響で延期されていた「平和のつどい」が10月5日、信州の幸あんずホールで開催され、講演会と1970年製作の映画「ひまわり」の上映が行われた。戦争の悲劇を描いたこの名作は当時ソ連邦のウクライナ・ヘルソン州で撮影された。今年2月のロシアによるウクライナ侵攻で現在ヘルソン州は激しい攻防が繰り広げられている。

▼昨年の「平和のつどい」では俳優の宝田明さんが講演に訪れた。宝田さんは旧満州で少年時代を過ごし、大戦末期にソ連軍の侵攻により収容所での生活を余儀なくされた。その際ソ連兵の蛮行を目撃。自宅に押し入られる恐怖体験を味わい、強制労働中には警備の兵士に銃撃され重傷を負った。講演では生々しい当時の記憶を迫真の演技で再現して下さった。

▼銀幕スターとして活躍された宝田さんだが「洋画が大好きだったが、戦後はソ連の映画だけは見る気持ちになれなかった」と語っていた。今年4月に87歳の生涯を閉じられたが、2月に起きたロシアの侵攻には強い憤りを表していたという。

▼千曲市での講演の際、宝田さんは上田から千曲川沿いをタクシーで移動し、その景色に感動したと話されていた。ウクライナの首都キーウは街の中心部を大河ドニプロ川が南北に流れる。その地形はハート形で千曲市の形にもよく似ている。ちなみにキーウの面積は839平方キロでこれは長野市とほぼ同じ広さだ。

▼ロシアの侵攻開始からすでに8か月が経過しているが、今もなお戦禍が収まる気配はない。ウクライナの市民はこれから厳しい冬の到来を迎えることとなる。

(W・S)