さらはにズム ちくま論説
▼「大切な人を一瞬で亡くし、当たり前の日常や未来が突然奪われた。」と語るのは、広島平和記念式典での小学校六年生の「平和への誓い」の一文である。▼七十七年前、広島・長崎に人類初の原子爆弾が投下され、二十万人が亡くなった。そんな原子爆弾のコードネームは、その形から広島型が「リトルボーイ(小さな男の子)」、長崎型が「ファットマン(太った男)」と言うそうだ。コードネームからは想像もできない極めて恐ろしい殺人兵器だ。広島の小学生の誓いの言葉が胸に突き刺さる。
▼今、核保有国のロシアが核を持たないウクライナに軍事侵攻。情報統制とプロパガンダで戦争を正当化し、多くの市民が犠牲になっている。テレビやSNSで繰り返される戦争報道。目に余りある惨状に心が痛む。今ほど平和の尊さを強く感じたことはない。▼前述の広島の小学生は「平和への誓い」の中で「自分が優位に立ち、自分の考えを押し通すこと、それは強さとは言えない。本当の強さとは、違いを認め相手を受け入れること、相手を理解することだ。」と訴えている。まさに正論だ。世界のリーダーたちにも分かってほしい。
▼万葉集に、日本は「言霊」の力によって幸せがもたらされる国「言霊の幸ふ国」と記されている。「言霊」とは「声に出して言うことで、それが現実になる。」ということだ。古代の日本人は、言葉に神秘的な霊力があると考えていたのだろう。確かに言葉は、人々に勇気を与え元気にしてくれる。一方、時として言葉は人を傷つけ争いの原因にもなる。▼だとしたら、私たちは「言霊」の霊力を信じ「心から世界平和」を「言葉」として発信し続けたい。
▼さて、屋代南高校の再編問題だが、市民からは再編案に落胆の声も聞かれる。県内十九市の中で、千曲市は人口規模で九番目の都市だ。▼万が一「屋代南」が市外に統合となれば千曲市の高校は一校になる。人口の少ない須坂市や諏訪市、岡谷市よりも少なくなる。つまり、人口規模で最も高校の少ない都市にならないか心配だ。人を育てまちに賑わいと活力をもたらす高校。この際、再編後の新校を千曲市に設置すべく「言霊」に託す思いで働きかけたいものだ。