さらはにズム
ちくま論説 一茶と姨捨
目出度さもちう位也おらが春 小林一茶の代表作「おらが春」の中の有名な一句。一見穏やかな正月の句のようだが、文化文政の時代背景が潜んでいるのではないだろうかと俳人の大谷弘至さんが記述している。一茶が生きた時代はカネやモノが世の中にあふれる一方、富裕層に富が集中、時の幕府は財政難で貨幣の乱発をするなど、格差社会の中での発句であり、一茶の嘆きの句ではないかと。
▼一茶の句を50年も彫り続けている板画家の森獏郎さんから、昨年暮れに令和4年版「一茶暦」が届いた。一茶の句をこよなく愛している獏郎さんの手作り板画カレンダーは圧巻だ。
▼森獏郎さんは千曲文藝協会の主幹の立場から、一昨年認定された日本遺産としての姨捨を、文芸の場として磨き直すべきだという。一茶の句碑が、いまだに姨捨界隈に一基もないのはどうしてだろうか。千年もの昔に編まれた「古今和歌集」に「姨捨山の月」が詠まれ、姨捨が「月の名所、歌枕の地」として広く知られることになった歌、「わが心なぐさめかねつ更科や姨捨山に照る月をみて」の歌碑もないと残念がっている。
▼今年は千曲市制20周年、来年は一茶生誕260年。文学の里、俳諧の聖地に相応しい一茶句碑を、そして、まさに日本遺産「月の都 千曲」の根源ともいうべき詠み人知らずの歌碑も建立しようと獏郎さんは仲間と策をめぐらしている。
▼千曲市には磨かれていない宝物がまだまだある。今あるものをひとつひとつ磨いていくことが街の活性化への近道だ。
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