さらはにズム ちくま論説

さらはにズム ちくま論説

▼「姨捨(田毎の月)の棚田」は一九九九年、全国で初めて棚田として国の「名勝」に指定された。また、二〇一〇年には、姨捨一帯の景観が認められ「重要文化的景観」に認定。二〇二〇年六月には、その集大成とも言える日本遺産「月の都千曲」に認定された。
▼千曲市にとって極めて大きな出来事だった。まさに千曲市の自然と先人の知恵と工夫で勝ち得た文化遺産だ。
▼そんな中の九月十日「月の都千曲」では中秋の名月を見ることができた。鏡台山から昇る美しい月との遭遇は、まさに心を揺さぶられる感動の連続であった。改めて故郷のすばらしさを認識した方も多いのではないだろうか。

▼お隣の上田市では千曲市同様、塩田平の「レイラインがつなぐ太陽と大地の聖地」が日本遺産に認定された。

▼そのストーリーは、大日如来(太陽)を安置する「信濃国分寺」と国土(大地)を御神体とする「生島足島神社」、信州最古の温泉「別所温泉」(聖地)が一本の直線状(レイライン)に配置され、夏至と冬至に、神社の鳥居の中を太陽の光が通り抜けるという神仏への信仰だ。
▼「月の都千曲」と上田市の「太陽と大地の聖地」を一つにすると「月と太陽と大地」のそろい踏みだ。まさに万物の存続を左右する切り札でもある。
▼千曲市と上田市の日本遺産が連携したら、両市にとって大きな力となるだろう。本格的な連携に夢が膨らむ。

▼話は少し変わるが「月の都千曲」は月だけではない。芭蕉や一茶も何度か訪れた「文学の聖地」でもある。今も句碑や歌碑が数多く残されており「学びの聖地」と言っても過言ではない。
▼最近は、その「学びの聖地」にある「屋代南高校」の存続問題が話題になっている。県教委は、屋代南を「長野千曲総合技術新校(仮称)」に統合再編するとし、年内にも三次案を確定するという。

▼民間の調査機関によれば、高校が廃止された場合、同世代の人口が減少し、若者の地域離れが進むとのデータもある。
▼地域貢献に力を入れ、百十三年の歴史を持つ「屋代南高校」の存続は、地域にとって大きな課題だ。▼新校の設置場所はこれから決めるとされているが、三次案をまとめる県教委には、高校再編を教育改革だけの視点にとらわれることなく「地域政策」の観点を加味した政策判断を望みたい。