『そろそろ 本気で信州移住』 北尾トロノ編著 信濃毎日新聞社
「信州の魅力ってなんだろう?」
こんなことを改めて考えてみると、長年信州に住み慣れた私たちが当たり前の生活の中からその魅力を伝えることは、案外難しいと感じることも多いのかもしれません。
コロナ禍においてリモートワークが定着してきたこともあり、脱首都圏という意識も高まっている中、年々増加する移住相談。令和元年度総務省の調査によると、各都道府県内に設置された移住相談窓口などで受け付けた相談件数は全国で約316000件。そのうち長野県は17000件と全国で最も相談件数が多く、実際の県内への移住者数も令和元年度には計2323人と平成29年度と比較しても400人増加し移住先として注目がされています。
本書はそんな移住先人たちを取材。編著を手掛けた作家北尾トロさんも、もともと松本への移住者です。スローライフの実践などイメージだけでは美化されがちな田舎暮らし。35組の体験をもとに「子育て」 「仕事」 「都会脱出」 「場所」と章立てし、動機や理由別で比較検討がしやすく、また実際の苦労話も多数掲載されています。関係人口からシフトし「本気」で移住を喚起させるため、実践者だからこそのリアリティある信州の魅力が詰め込まれています。
愛着を持って県内各地で過ごす移住者の姿は、地元民以上に信州の魅力を伝えることが上手いと感じ、移住案内と同時に信州のガイドブックとしても通用します。(文:田中一樹)
価格1700円(十税)
屋代西沢書店ほか県内書店で発売中。