フォト&エッセイ 自転車のある風景 第二十四回 オーストラリア横断自転車旅行⑫ レフロイ湖
テントが張れない大きな都市部以外は、旅の間はずっと野宿だった。毎日暗くなると、クルマのライトが届かない場所まで道から外れてそこでテントを張って一夜を過ごす。なので朝になってテントから出ると、とんでもない場所で寝ていたことに気が付いてびっくりすることも度々あり、レフロイ湖の畔で泊った時もそうだった。夜、自転車を停めてハンドライトの小さな灯りでテントを設営している時は、辺りの雰囲気がいつもと違い不気味でちょっと怖かったのだが、朝になると目の前には朝日に白く輝く平原がどこまでも広がっていて、一瞬、真夏のオーストラリアなのに雪原にいるような錯覚に見舞われてしまった。白い平原の正体はどこまでも続く干上がった塩水湖。そのレフロイ湖の面積は琵琶湖の6倍もあり、東北信の市町村が全部入ってしまうくらい広い。たまたま湖と隣接してる場所で野営したため朝になって気付いたが、実は前の日は1日中湖の横を走っていたことを地図を確認して初めて知り、改めてレフロイ湖の大きさを実感した。塩湖の周りは土壌に塩分が多く含まれているため植生も他の場所と違い、それが前夜に感じた不気味な雰囲気につながっていたようだ。そんなレフロイ湖では、広く平らな湖面を活かしたランドセイリングと呼ばれる風の力で陸上を走るヨットのような乗り物の世界大会が行われており、世界記録も生まれている。滅多に走る事の出来ない塩の平原を見て、サイドバック等の装備をすべて外したMTBで湖面を走ってみた。ランドセイリングは風の力でかなりのスピードが出るらしいが、ジャリジャリと塩を掻き上げながら人力で進むMTBは想像していたよりもかなり走りにくかった。
ただ、少し走ると視界は白一色の世界になり、朝日に輝く広大な銀世界で、滅多に走ることのない塩の上の走行を楽しんだのだった。