フォト&エッセイ 自転車のある風景 第十三回 オーストラリア横断自転車旅行

フォト&エッセイ 自転車のある風景

第十三回 オーストラリア横断自転車旅行

写真と文 石黒靖彦

おかげさまでこの連載も2年目を迎えることとなった。今月からは、自転車でオーストラリアを旅行した時の想い出を、写真と共に振り返って行きたいと思う。今から30年前の2月の終わり、南半球ではまだ夏真っ盛りの中、西オーストラリア州の州都パースから、東海岸のシドニーまで、6300㎞の自転車旅行に出発した。当初はオートバイでの旅を計画していたのだが、旅の前にそのバイクを盗まれてしまった。比較的治安のいいオーストラリアだが、こと乗り物に関しては盗まれる方が悪いという考え方で、特にバイクは盗難の対象になり易かったのだ。

 バイクが無くなって別の手段を考えなければならず、そこで日常の足代わりに使っていた自転車での旅を検討してみた。バイクの場合は、燃費と距離から必要なガソリンの量を計算したのだが、自転車の場合は、距離と旅の期間から本当に実現可能かを先ず考えなければならなかった。距離が約6000kmなので、1日100km走れば60日あればたどり着ける。1日100kmは、時速20kmで走れば5時間走ればクリアー出来る。更に100km以上走れば貯金が出来て、休養日も取ることが出来る。そんな単純な計算だったが、当時の自分にとって決して無理な数字とは思えず、壮大だが十分に実現可能な目標に見えた。そういうわけで移動の手段を自転車に決めて、バイクの盗難保険でバッグ等の旅の装備をそろえたのだった。旅の終点シドニーから日本へ帰る航空チケットは、出発日を5月連休明けに決めて予めパースで取ってしまった。ゴールの期限を決める事で、なんとなく旅がだれるのを防ぎたかったのだ。こうして旅の準備は着々と進んだ。次回も出発前の準備のあれこれについて触れて行きたいと思う。