第十六回 オーストラリア横断自転車旅行④
旅の途中で声を掛けてくれた人の家に泊めてもらう
写真と文 石黒靖彦
初めて現地の人の家に泊めて貰ったのは旅を始めてから3日目のことだった。
それまでもいろんな人が声をかけてくれたのだが、まだ日の高い時間だと、100km以上走るという一日のノルマが常に頭の隅にあり、先を急ぐという理由で全部ことわっていた。しかしその時は夕方で、そろそろ寝る場所をさがさなければと思いだした矢先。走行距離も100kmを既に超えていたので、好意に甘えてお世話になることにした。
声をかけてくれたのはRennyという老人。愛犬と一緒に暮らしているという彼の家にお邪魔して、旅の話しや日本の話しなどをしながら、夕食をともにした。驚いたのは、彼のうちに泊まった日本人は自分で4人目だと聞いた時。ローラースケートで横断中の日本人、一輪車で横断中の日本人、ショッピングカートに荷物を積んで横断中の日本人、そして自転車の自分が4人目ということだった。自転車の自分ですらクレージーだと言われていたが、もっとすごい先人達がいて、みんなRennyにお世話になっているという事実にびっくりしたのだが、さらに違う意味でびっくりする事実を彼に知らされた。
“俺は同性愛者でおまけに糖尿病だから夜中に頻繁に起きるが、気にしないで欲しい” 寝る直前になって彼はそう言ったのだ。驚きはしたが、怖いという気持ちはあまりなかった。彼が老人だったということもあるし、そもそも言う必要のないことを自分から言ってくれたということは、信用してもいいのではないかとその時は思ったからだ。
というわけで、その後起こった悲さん(?)な出来事はまた次回の連載で。