小学生のころ、地元に滝があると友達に聞いて、自転車に乗って探しに出かけ見事かおるり三つの滝が連なるそこそこ立派な滝だと聞いていたのだが、急な山道を自転車を押しながら、ようやくたどりついた林道のわきには、木々の間に流れる細い滝が一本あるだけだった。そう、小学生の自分は倉科の三滝に行くつもりが、森の女滝に行ってしまったのだ。
その後、中学生になると倉科の友達と三滝に行くことが多くなり、更に大きくなって県外から友達が遊びに来た時も、連れて行くのは細く流れる女滝ではなく、より迫力のある三滝の方だった。
再び女滝に行くようになったのは自転車で林道を通って坂城まで抜けるようになってからだ。久しぶりに寄った女滝の側には以前はなかった案内看板が立てられており、簡単な滝の由来等も書かれていた。また、子供のころは知らなかったが、滝のそばには生きた化石と呼ばれるメタセコイアの大木が生えていることにも大人になってから気がついた。看板に“滝で身を清めていると恋人が現れて結ばれる”とぼんやり書かれているが、はたして滝に打たれていたのは男性女性どちらだったのか?
70年前まで日本にはなかったメタセコイアを、誰が何の目的でこんな山の中に植えたのか?車もめったに通らない静かな山の中で、滝の音をバックに、そんな身近なロマンに思いを馳せてみた。