ワイド特集 市議選① ◆千曲市議選の争点は

ワイド特集 市議選① ◆千曲市議選の争点は

 四年に一度の市会議員選挙が7月7日に行われる。千曲市の誕生から二十年。千曲市としては6回目の市議選となる。市長と市議の任期は四年。今回は7月7日の投開票に向けて、6月30日に告示となる。5月23日には市役所で立候補手続きの説明会が開催。本紙が発行される6月1日には、かなりの候補者の名前が判明してくると予想される。すでに政党によっては立候補者を固めているほか、別の政党は候補者をユーチューブで公募している。現職はじめ新人の動向についても市民の関心を呼ぶところだろう。この秋には市長選も控えており、千曲市の選挙イヤーはいよいよ本格的に動き出す。ただ、市民の関心がいかに上がるかどうかが、千曲市の未来に関わっていると言ったら言い過ぎだろうか。

 前回、令和2年(2020)年7月12日の選挙では、定数20に対して25人が立候補。当選者の最多得票数は2190票、20番目の得票数は863票だったという。投票率は58%と千曲市となってからは低い投票率だった。つまり前回は40%余りが浮動票ということだ。人口60000人足らずで、今年3月1日現在の有権者は男24187人、女25726人の合計49913人。その時の投票率にもよるが、当選ラインは約880票と予想される。

 さて、市議選の争点となりうる課題を挙げると次の通りだ。

 ①地域振興・街づくり、②医療・健康・福祉、③お年寄り対策、④子育て支援、⑤防災・自然災害への対策・防犯・交通安全、⑥道路・水道・ガスなど生活設備対策、⑦教育では具体的な元気がでる学校づくり・不登校問題、⑧文化財対策・スポーツ施設、⑨雇用・労働・人手不足、⑩市民参加・市民協働・区長会や常会の今後について、⑪外国人との共存、⑫行財政改革、特に一般予算の透明性確保。ほかにもまだ課題はあげられると思う。

 前回の市議選では、その前年、令和元年10月12日夜の台風19号による千曲川の堤防越水による被害が大きく、災害の影響が生々しかったため、洪水対策や防災拠点の整備をあげる候補者が多かった。

 少子化に対しては、なぜ子供が少なくなっているのかを多面的に考えていこうという意見を何人も指摘しており、特に産業界への働き方改革を求める声が強かった。

 今回、とりわけ争点となることは以下の課題だ。

■屋代開発

 これは、上信越自動車道の坂城IC~長野IC間において、「屋代スマートインターチェンジ」(仮称)の設置と60年も前に検討された市道一重山2号線とを結びつけた開発道路計画とされる。

 報道や市民団体の調査によると、当初の予算では、屋代スマートインターが5億円、市道一重山2号線が18億4000万円だったとされる。それが一年もたたないうちに、人件費や材料費の高騰などでスマートインターは約5倍の24億円、2号線は2倍以上の39億円と投資額は跳ね上がった。人件費や材料費の高騰だけでは説明がつかないだろう。スマートインターのアクセス道路は、県が中心になり造るのではないのか。買収土地が拡大したというならば、それこそ説明責任を行政は果たさないと、市民の多くは納得いかないだろう。

 国が定めるスマートインターチェンジ整備事業制度実施要綱に基づき、令和5年7月21日より国土交通省、長野県、長野県警察本部、東日本高速道路株式会社と千曲市で構成される地区協議会が設立された。スマートインターチェンジの名称は仮称であり、正式な名称は地元や利用者のご意見等も踏まえて決定されるという。

 すでに国が動いているから、それに沿って市は動くというのか。3月の定例市議会で一部の市議がこの問題をただしたが、この屋代開発の調査費を含む一般予算は可決したという。

 市議は地域の住民の代表として、議会で行政について不明なことを質していく使命があることを肝に銘じてほしい。莫大な予算をきちんと市民に説明しないとあとで莫大な借財を背負うことになってからでは遅い。

■「寄り添う」こと

 映画「くちびるに歌を」。2015年に公開されたこの映画をご覧になった方もおられると思う。五島列島のある島の中学校、女子生徒と男子生徒の合唱部の物語。いろいろな悩みを抱えて苦しみながらも、何とか踏ん張って、ハーモニーを作り上げて行く生徒たち。そして最初はやる気のなかった音楽教師を新垣結衣が演じており、劇中でメインテーマ曲であるアンジェラ・アキ作詞作曲の「手紙■拝啓 十五歳の君へ~」をピアノで弾く。

 なぜこの映画をここで紹介したのか。理由を説明するよりも前に、見ていない方はぜひともご覧になってほしい。

 「寄り添う」ということがどういうことか、少し分かるかもしれない。日々忙しい学校の先生はもとより、中学校の生徒や小学校の児童のみなさんにもぜひご覧になって欲しい。

 千曲市誕生二十年を記念して、昨年から今年にかけていろいろなイベントが行われた。とりわけ音楽会は、様々なコンサートがあった。コロナ禍を超えて第九もこの3月に大合唱が響いた。市民によるオーケストラをはじめ有名女性歌手など、本当にいろいろなコンサートが行なわれた。関係者の皆さんは大変ご苦労様でした。

■「身近なことから」

 街つくりでも、同じ様な気持ちで取り組むことはできないだろうか■

 「寄り添う」ことは、日々の身近なことから、こうしたら改善すると考えてみることだろう。仕事で忙しくしているから自分のことで精一杯という方もおられるかもしれない。家族のことで手一杯だから、「町の役や常会の会長もできない」「できたら不燃ゴミの当番だけにしたい」といった思いの方もおられるだろう。

 一方で、「町のためだからと昔から親父やじいさんがやってきたから。自分もできることはやる」という方もおられるだろう。町のことで地域の方が一番関心があるのは、不燃ゴミ、プラスチックのゴミの当番だろう。屋代1区のある複数の常会で協力してゴミ当番を3人から2人にして、当番のメンバーを組み替えた。

 「冬にいつも当番となってきた。朝早くて辛い」「仕事のために朝早く出勤するから、早く箱出しをしていいですか」といった相談もあった。

 可燃ゴミも、丈夫なネットを被せても、カラスは下の方を狙って、くちばしでゴミ袋を破って餌になるものを引き出す。カラスよけのスプレーは効果が今ひとつだ。こうした身近な悩みを市議候補は聴いて、市役所の担当にあててほしい。市役所の職員はこうした声があったら現場を見に来て欲しい。市議候補は見て知っているはずだろう。

 若者への提案を

 千曲市議選では市内の各地域の代表が、それぞれまず地元住民から何が必要なのかを聞くことから始まる。上山田地区、戸倉地区、更級地区、五加地区、八幡地区、桑原地区、稲荷山地区、埴生地区、屋代地区、森地区、雨宮地区…こう地区名をあげていくと、候補者の地元と一致していくように思える。これは当然だといえる。地元の要望を市の施策に反映させるのは当選するための必要条件だろう。これができなくては、推していく意味がなくなる。

 例えば、「道路が狭くて、車が通りにくい」「通学路が整備されていないから、登下校時は危ない」「街灯が暗いから明るくして欲しい」など、市が関係しているかどうかわからないが、地元の施設の老朽化を修繕してもらいたいという要望が多いのは当たり前かもしれない。

 特に、車の所有が、一家に一台から「一人一台」のような時代となり、車の普及が急速に拡大したなかで、渋滞の解消につながる開発や道路整備は市議選でアピールするには欠かさない内容だ。

 だからこそ、目に見える施設での貢献、例えば保育施設や給食センター、体育館など市民が必要としている施設建設で実績を作ったことをアピールするのもよいだろう。

 しかし、インフラ整備への貢献と併せて、地域の人々、特に若い人にどんな具体策を示していけるかが大事ではないか。 

 5月号の本紙でも提案したが、 来年4月に男女共学となる清泉女学院大学は、「清泉大学」として新たにスタートする。そして、申請している政府の「大学・高専機能強化事業」の審査がこの夏に通れば、旧更埴庁舎跡地に「農学系学部」が新設される可能性は格段に強まる。醸造、発酵学、バイオテクノロジーを学ぶ場所となろう。

 清泉大側は、屋代南高校のライフデザイン科と「何かできる」と探っている。まさに「連携」に名乗り出ようとしている。ここに市内の発酵系企業もぜひ参加してほしいところだ。

 さらに、県立更級農業高校や松代高校の商業科は一緒にできる具体策を話してみたらどうだろう。この橋渡し役を買って出る市議候補はいないだろうか■

 こうした未来志向の連携についても、屋代南高の存続問題は身近な課題としてきたる7月の市議選ではぜひともアピールされることを期待したい。

(本紙特任記者 中澤幸彦)

千曲市議会議場(上)

前回2020年の千曲市議会議員選挙には 定数20に対し25人が立候補(下)

前回の千曲市議選投票所の様子(2020年7月12日)

屋代南高校 立候補手続説明会(5月23日)