千曲市 会員企業紹介 vol・⑤ 株式会社長野セラミックス
(一社)ちくま未来戦略研究機構の会員企業を一社ずつ特集していくコーナー。第5回は「地球の水と空気をもっときれいに」をテーマに、自社開発の機能性セラミックスを使った様々な製品の事業を展開する千曲市内川の「株式会社長野セラミックス」です。
遠赤外線への挑戦 セラミックスの開発
35年前、私がセラミックスの世界に飛び込んだきっかけは、低温の遠赤外線サウナでの偶然ともいえる遠赤外線との出会いであった。元々溶接一筋に生きてきて、遠赤外線の知識もなかった私であったが、遠赤外線の魅力と魔力を身をもって体験しその虜になった。
効果絶大といわれる遠赤外線セラミックスを作っているところが、長野県下では極めて少ないこと、焼き鳥を焼く「炭火」が遠赤外線だという事を、以前、何かで読んだ事を思い出し、遠赤外線にかかわる書物を読みあさり、遠赤外線セラミックスを作るには、さまざまなセラミックスの素材が必要なこと、そのセラミックス素材の調配合次第によって放射率が異なること、出来上がったセラミックスを何かに溶射することによって放射体が出来る事などがわかった。これらの知識を頼りに、生業である溶接仕事終了後、毎日、長きに亘る試行錯誤の研究・実験の結果、最終的に長野県工業試験場(現・長野県工業技術総合センター)の指導員も驚愕した放射率0.97の遠赤外線セラミックスの開発に成功した。専門雑誌を調べてみても、掲載されている遠赤外線関連メーカーは全て放射率0.8未満であり、私が開発したセラミックスがはるかに優れていることがわかった。
事業化への道
遠赤外線放射率0.97という高性能セラミックスの開発に成功したが、次の問題はそれを応用して何を作るかである。セラミックス単体ではなかなか売れるものではない。あれこれと思いをめぐらしている時に、焼き鳥屋で主人が汗をびっしょりかいて焼き鳥を焼いている姿を見て、以前半ば冗談めいて考えた、遠赤外線を利用して焼き鳥ができないかという発想が、開発した高性能セラミックスを使えば単なる空想ではなく、より現実味を帯びてくる。
もはや迷ってはいられない。実用化の第一歩は「焼き鳥機」と決まった。高性能セラミックスを応用すれば、焼き物にはうってつけかもしれず、焼き鳥屋の主人だって汗を流さずに済むし、手間も省けるはず。
単純な発想であったかもしれないが、食品業界の厨房機器に着眼したのは、当時のグルメ指向の流れに沿っていて大正解だったのではなかったかと今でも思っている。
製品化も試行錯誤の繰り返しであった。東京かっぱ橋に出掛け、焼き鳥機を購入、バーナー部分を覆うステンレスカバーにセラミックスを溶射し、焼き鳥の試し焼と試食を行った結果、ついに満足のいく焼き鳥ができた。そうこうしているうちに、信濃毎日新聞経済面に開発したセラミックスが大きく取り上げられた。
セラミックスの新素材が長野県内で開発されたことが衝撃だったのだろう、新聞の報道をきっかけに問い合わせの電話が矢継ぎ早にかかってきた。
しかし、新素材を開発したとはいっても、それを利用した新しい焼き鳥機を開発したわけではない。オリジナルの「自動焼き鳥機」を完成させるべく試作を繰り返した結果、満足のいく試作機が完成した。
日刊工業新聞が大きく記事にしてくれたお蔭もあり、反響が大きく、問い合わせの電話が相次ぎ、それに伴って注文が入り始めた。
その後も改良を重ね遂に1時間に600本焼ける「完全自動焼き鳥機」が完成。戸倉町商工会から紹介された展示会に出展し、セラミックスの宣伝のために展示会で実演、試食してもらい大好評を得た。その後、ファミリーレストランからの依頼により、ハンバーグ自動機「全自動ハンバーグ・ロボ」の開発にも成功した。
平成2年11月20日個人事業から正式に株式会社長野セラミックスとなり、現在は健康・環境・美容をテーマに、遠赤外線に留まらず、数百種類の機能性セラミックスと応用製品を開発・製造・販売、代理店約150社を有する国内有数の総合セラミックスメーカーとなった。
海外展開へ
日本国内は北海道から沖縄県まで全国約150社の代理店を有しているものの、今後、国内需要の大幅な伸びは期待できない。その為、海外企業との取引に注力すべく手を打っている。まずは欧州・中東の企業にアプローチすべく、JETRO(日本貿易振興機構)より10社、社内で15社交渉先企業をピックアップしてもらい、早速アプローチを開始している。すぐに結果が出るわけではないが、粘り強く、根気よくアプローチを継続していく。
弊社は、「全員野球で ナイスプレー」をスローガンに、今後も社会に貢献できるように全員一丸となって前に進んでいく。
(写真上)代表取締役社長 佐藤義雄 (写真中)本社外観 (写真下)ショールーム外観