千曲市『山城』散歩 第五回 入山城跡
入山城跡は、千曲市新山地区と漆原地区の間の尾根につくられた山城である。千曲市史跡に指定されているこの城ならではの魅力を5つにまとめてみた。
①150年前から知られていた城 城は寄合(よりあい)氏、入山氏、横山氏、安藤氏などに受け継がれたと伝わるが、いつ廃城になったのかよくわからない。ただ、明治14年に新山村が長野県に提出した書類には、すでに「古城跡」と書かれている。150年前から住民によく知られていたことがわかる。
②教科書のような城 城のシンボルといえるのが4つの堀である。岩盤を削って掘られており、市内でも有数の規模である。不思議なことに南側の斜面には堀がない。襲ってくる敵からだれを守るためつくられたのか…新山の地に山城がつくられたヒントが隠されている。
堀によって区切られた頂上の平らな部分を郭(くるわ)と呼ぶ。戦いになると、ここに立てこもった。5つの郭と、土を盛り上げてつくった土塁(どるい)がよく残る。
③戦国時代の景色を追体験できる城 千曲市域には山城がたくさんつくられた。交通の要衝であるこの地をおさえることが戦略上重要であったためである。入山城跡からは荒砥城跡や葛尾城跡を望むことができ、武将たちが見たであろう景観を追体験できる。
④見学しやすい城 近年、戦国ブームで山城への注目が高まっている。インターネットで「入山城」を検索すると、全国の山城ファンが訪れていることがわかる。多くの山城は険しい山の頂にあるが、入山城は麓からの高低差があまりなく、比較的簡単に登れることも魅力だろう。
⑤これからきれいになっていく城 令和2年8月、新山地区の有志により「新山の歴史と自然に学ぶ会」が結成された。毎月1回の活動により、階段や記載台、案内板が設置されるとともに、雑木が除去され、城の全貌がよくわかるようになってきた。さらに、会報『新歴自学』が発刊され、活動の周知も進めている。地域の汗によって、歴史ある山城と里山の姿を取り戻しつつある。
(千曲市歴史文化財センター 平林大樹)