千曲市の街づくり「未来図」

千曲市の街づくり「未来図」

高齢化に伴う人口減少問題について意見交換する場となった。ファシリテーター(司会の役割に、発言をうながして会議をまとめる)は、信大名誉教授で信州地域学会代表の石澤孝さん。2月、5月のチャットに続いて3回目の仕切り役を務めた。2月には、長野県内の特徴ある中心市街地活性化策の具体例を紹介したうえで、「千曲市では市役所への自動運転循環バスの運行」を提案した。今回のチャットの締めくくりでも石澤先さんは「前に提案した自動運転循環バスはどうですか」と念を押されていた。

 今回のチャットは今年3回目となるが、千曲市から「千曲市の現状と今後のまちづくり」と題して、人口減少が地域の将来への影響について「第三次千曲市総合計画」づくりにあたって、千曲市の将来について16年後の2040年に人口の長期目標として50000人としている。

 この目標人口は、第3次千曲市総合計画をつくるのにあたっても基礎となる数字という。すでに別稿でも触れているが、千曲市は20歳から39歳までの年代が大きく減少している。その背景は、高校を卒業した後、県外の大学や専門学校への進学、就職も市外となるケースが多いのが特徴とされる。

 合計特殊出生率の推移では、2013~2017年は1.45で2003~2007年の1.41の最低水準と比べて上昇しているが、長野県の1.57に比べて低い水準。その理由は20歳から39歳の女性が少ない、25~39歳の女性の未婚率が高いことなどをあげた。

 人口減少によって地域の将来に与える影響を、小中学校の児童や生徒数の減少や、民間サービス施設、商業施設、医療施設、娯楽、文化施設は一定移住の人口規模の都市でないと存続が困難になるなどをあげている。ここで千曲市が紹介した国土交通省の資料データによると、ハンバーガー店は人口規模が3万2500人~2500人の自治体規模だと立地する確率が50%及び80%となるという。千曲市にも有名なマクドナルドがあるが、存続の心配はあるのだろうか。

 総合計画に基づく個別計画も、防災、交通、都市基盤、子育て、教育、生涯学習、スポーツ振興、地域環境保全、公園緑地、歴史文化財、保健医療、高齢者福祉、商工業、農林業、観光振興、移住定住と多岐にわたり計画が作られるという。

 説明は丁寧で分かりやすかったが、「マニュアルを踏まえた模範解答の印象がある」からこそ、街づくりにかかわる個別具体的な課題、たとえば、2027年に創設される清泉大の農学部への千曲市としてのかかわりはどうなっているのか。旧更埴庁舎の跡地を貸し出すからこそ、学生の居住する住まいについて市としてできることはないのか、屋代南高ライフデザイン科との連携、地元企業や食品関連企業との連携については協力体制はどうなっているのか。高等教育機関の招致というチャンスが来たのだから、千曲市として全面的に協力するなら具体的に土地の貸与だけでなく「連携策」をもっと示した方が分かりやすい。

 石澤さんも指摘していたが、千曲市と清泉大との「包括連携協定」は結ぶことを前提にしてよく検討しておいてほしいものだ。

 また5年前の令和元年10月12日に県内を襲った台風19号で千曲市は杭瀬下、八幡、粟佐など各地で床上、床下浸水の被害が広範囲に及んだ。市役所、近くの図書館、千曲商工会議所、理容室、漬物屋、コンビニも甚大な被害を受けた。政府の方針を受けて、千曲市のおかれている状況の再分析や新たな防災への取り組みを盛り込み、1年半後の令和7年3月に、千曲市立地適正化計画を改定するという。現場100回という千曲川沿岸を視察して、国、県とも連携して確固たる防災計画を作ってほしい。

◆再度の検討を

 本紙の新年号で、しなの鉄道の小島、杭瀬下を中心とする屋代駅前通り商店街と屋代駅前交差点から県道白石・千曲線を須須岐水神社に北側に向かう屋代の通りの「賑わい」を取り戻すために、いろいろな提案を紙面化した「未来予想図」を描いてみた。

 この地域は現在、八十二銀行と長野銀行の両屋代支店の統廃合をはじめ屋代駅前の一部のテナントビルの変化、韓国料理店の再オープンや、国道18号線沿いの日本デルモンテ長野工場の来年4月の操業停止による撤退によって街が大きく変わろうとしている。ただプロバスケットボールチーム信州ブレイブウォリアーズのホームが長野市に移り、千曲市のファンをがっかりさせる出来事もあった。

 日本は世界一安全で安心できる国といえる。千曲市でもそれは今のところはいえよう。

 とりわけしなの鉄道の屋代駅の駅前通りは、昔は食堂、中華そば屋、居酒屋、パチンコ店はじめ喫茶店、フルーツ販売店などが並んで、杭瀬下の交差点までに12年前の2012年は百近くのお店でにぎわっていた。現在は、昔からの酒屋、花屋、雑貨店、書店、楽器店、薬局、呉服、和菓子屋、洋菓子屋、洋装・洋服店などが頑張って営業している。今や屋代駅前商店街も四十店余りとなり、県道沿いの屋代地区は理容室、美容室、雑貨店、酒屋など十数軒となった。

 一方、須須岐水神社から屋代駅に向かう県道白石・千曲線沿いにはかつて五十店ほどの商店があった。雑貨屋、衣料品、お茶を売る店、何軒かの菓子屋、饅頭、煎餅、魚屋、八百屋、雑貨、文房具店、町中華が軒を連ねていた。それが今や、酒屋、雑貨店、すし屋、3軒の理容室、薬局、昔からのお客さんがいる美容室、クリーニング店など10店余りとなった。県道が拡幅されたのをきっかけに、お店を閉店したところも多いと聞く。

◆「ヘルスセンター」から「ヘルシーロード」に

 この地区にほしい施設は、お年寄りや、家族連れも若者も誰もが集う「銭湯」、できたら「スーパ―銭湯」だ。この地域はクリニック、デンタル、整骨院、そして薬局がそろっている。この強みを生かさない手はないだろう。千曲中央病院のある杭瀬下の交差点周辺から屋代駅前通り。そして県道白石・千曲線(県道392号線)の屋代駅前交差点を北に向かうとホテルルートイン更埴の隣には、鴇沢眼科医院が開設した。ウォーキングをしやすい設備(ベンチや距離を示すマーカーなど)を整えてほしい。

 そのうえで「リハビリテーションセンター」を備えた「健康センター」ができれば、「あんずヘルシーロード」(仮称)は、想像の「未来図」ではなく、現実的なものとなってくるのではないだろうか。

◆戸倉駅前の開発について

 しなの鉄道の戸倉駅前の開発については、現場をよく取材して次号以降に記事化したい。千曲市の担当者は書類づくりで忙しいだろうが、データをもって何ごとも現場にきてよく見て観察してほしい。

 市長候補には、市内の各地で今から市民が何を求めているかによく耳を傾けてもらいたい。

(本紙特任記者 中澤幸彦)