千曲市・坂城町 『山城』散歩 第十三回 春日山城(上越市)

千曲市・坂城町 『山城』散歩 第十三回 春日山城(上越市)

13回に渡って連載した「山城散歩」は今回が最終回。最後はお隣、新潟県上越市にある春日山城を紹介したい。国の指定史跡であり日本百名城に名を連ねる中世を代表する山城だ。北陸街道と信州からの街道を監視する要衝で、また直江津の港を掌握できる位置にある。比高160mの台形の山であり、いかにも象徴的な山容をしている。

 長尾氏の本拠地として長尾為景によって整備されたが、もっとも有名なのは上杉謙信(上杉景虎)の居城となったことである。謙信は春日山城を拠点として川中島や関東など各地に軍勢を進めていった。謙信の死後は、家督争いに勝利した上杉景勝の居城となったが、1598年、景勝が会津に転封となると、後に入部した堀氏は山城を避け、直江津港近くに福島城を築いた。このため、春日山城は廃城となり、その歴史に幕を閉じた。

 城はよく整備されており、春はたくさんのカタクリの花が出迎えてくれる。山頂の主郭にはサクラが植えられ街が一望でき、直江津の海が見える。多くの市民が訪ねる憩いの公園となっている。麓には上越市の埋蔵文化財センターがあり、甲冑姿の職員が出迎えてくれる。春日山城のガイダンス施設を兼ねており、上杉謙信の生涯や川中島の戦いについて、ジオラマ展示やタッチパネルなどで詳しく紹介している。市内の歴史に関する展示のほか、調査室の大きな窓からは、縄文時代から古代まで、市内各地の遺跡の出土品の整理や復元作業を見ることが出来るようになっている。埋蔵文化財センターの研究・保管という機能に加え「公開」を目的に据えており、市民や来訪者が上越市の郷土の歴史に親しみやすい施設となっているのが特徴だ。千曲市は今年で20周年を迎えるが、残念ながら各時代を通じた歴史を知る施設がないのが現状だ。

 市内近郊にはまだまだ紹介したい山城が残っている。戦国の城は大名だけではなく、さまざまな地域社会がそれぞれにふさわしい城を築いたことが特徴である。それぞれの生命財産を守るために戦った名もなき民衆の姿が見えてくる。それらの史跡が地元の市民によって守られてきたことは、信州の宝ではないだろうか。ぜひ、実際に訪ねて地域の歴史に思いを馳せてみて欲しい。

<参考文献>「完全詳細山城ガイド」加藤理文監修、学研プラス、2018年