ことし建築から132年目を迎える屋代小学校旧本館。文明開化の時代のモダンな雰囲気を今に伝える歴史建造物だ。県内に現存する明治期の学校建築は数例を残すのみで、屋代小旧本館より古い建築物は、昨年国宝指定を受けた松本の旧開智学校校舎を筆頭にいずれも県宝や重要文化財に指定されている。それらと比べても決して遜色のない歴史的価値のある建物といえるだろう。だが、長い月日の風雪により、建物の老朽化が近年深刻化してきた。
「屋代ふるさとカルタ」に「屋代小旧本館は屋代に意気込み 洋風建築」と謳われる千曲市が誇る貴重な文化財。その保存と活用を望む声が地元からあかっている。
特色
校舎の外壁は下見板張。という開拓期のアメリカの建築様式が用いられ、ペンキで塗装されている。一方で屋根は日本伝統の入母屋造(いりもやづくり)で瓦葺きという和洋折衷スタイル。これは文明開化当時の特色を遺す「擬洋風建築」と呼ばれるものである。
建物全体の工法は尺貫法だが窓枠にはメートル法が採用された。
幅はちょうど1mで、これで子供たちにメートルのサイズを教えるのに使われたという。
また一部のガラスは当時のまま、まだ国内の技術が低かったため、透明度が低く気泡が残っているのがわかる。
正面玄関の車寄せは小学校の入学式の際、集合写真の場所とな。平成になるまで使われてきた。その上には高欄付きのベンダがありスタイリッシュな本館の顔となってい。
歴史と現在の状況
旧本館は明治21年(1888)7月に完成。現存する県内の明治期の学校としては長野県宝に指定されている松本市の山辺学校(明治18年建築)に次ぐ歴史を誇る。
この本館は昭和53年(1978)3月までは校舎として児童たちに使用されていた。この年、新校舎の建築に伴い、曳家工法で現在の場所に移動された。その後、市の教育資料館として使用されていたが、千曲市合併後、森将軍塚古墳館の建設に伴い業務を移管。その後は他校の古い教材や標本などの保管場所となっている。
現在は耐震性に問題があるため入室を制限しているが、明治期の教科書など貴重な史料が館内に展示されており、毎年秋、屋代小3年生の特別授業の際には開放される。
保存の要望
建物は老朽化加准み、傷みが激しい。耐震工事も施されていないため保全に懸意が生じている。窓枠は建築当時の求求の上下スライド式で、隙間が空いているため雨風が入り込みやすい。また、2階の講堂は天井の塗装が多数剥がれ落ちているほか、が変形して大きく波打ってしまっている。
約10年おきに行われていた外壁塗装工事は2009年が最後で、昨年は市の予算がおりず実施されていない。
憂慮した地元住民らは昨年10月7日「屋代小学校旧本館の保存活用を進める会」を設立。 12月に市長と教育長あてに旧本館の解体修理と保存活用を求める要望書を手渡した。今後は県宝への指定を目指し、広報や募金活動を展開する計画だ。事務局長の和田英幸さんは「これでようやく一歩前に進んだ」と手応えを語る。今後の運動の進展に期待したい。(5月15日取材)