千曲市長インタビュー 屋代高校新聞班の高校生記者が再選を果たした小川市長を取材
屋代高校で校内新聞「鳩ヶ丘新聞」を発行している新聞班が小川市長へのインタビューを行った。千曲市役所を訪問した高校生記者たちは自ら考えてきた質問を市長に問いかけた。同席したちくま未来新聞がインタビューの模様を紹介します(11月13日取材)
「小川さんが市長を目指した理由をお聞かせください」(栁沢舜也くん)
選挙にそもそも出ようと思ったのは、行政書士という仕事をやっていまして。その行政書士の団体がありましてね、行政書士会という団体なんですけど。その中で同じ同業の先輩方が、割と地方議会の議員をやっていらっしゃる方が多くて。そういう方々のお話をお聞きするなかで、ちょっと自分も目指してみようかなという気持ちがあったんですね。
最初に議会の議員をやらしていただいているときに色々市政とか県政を勉強してしていく中で、自分の考えをまとめて住民の皆さんの意見も聞き「こういう政策をすればいい」という提案をすることがあるんですね。提案をしていく中で、議会の議員の仕事ではちょっと物足りなく感じてきて。その政策とかを提案するだけじゃなく、ぜひ実行する側に挑戦したいなという気持ちがありました。それは議員になってからそういう気持ちがありまして、市長に挑戦しようということになったんです。
「2期目に主にどこに重点を入れていくのか。学生に対してのものがあれば伺いたい」(佐藤敬利くん)
1期目はスマートインターチェンジですとか、道路関係のいわゆるインフラ整備に力を入れてきたんです。地域の活性化の元となるのがやはり道路とかそういった社会資本の整備なので、それをまず初めに手掛けて。2期目はやはり、いわゆるハードだけではなくソフトですね。人に対して…今日ちょうど学生の皆さんがいらっしゃっているけど、学生さんの学ぶ場所の確保とか、居場所ですとか、そういったことも支援を。さらに勉強しやすくなるような環境整備。自習室が足りないとかいろいろ市民の要望もありますし。そういうようなことも。居場所って言いますかね、そういった場所の整備もしたいなと思っていますし。
あと今度、清泉女学院大学の農学部というものが、前の更埴庁舎の跡地に出来るという話になっていまして、いま市の方で開学の準備を大学と一緒に協議しています。農学部なんですが、信大とかそういった以前からある農学部とはちょっとイメージが違うもので。発酵とか醸造とかそういった学科を一つ作るのと、あともう一つが広く浅く農学をベースとした地域で活躍する人材を育てる学科を作りたい。そういう話なので市としてどういった教育が出来るかということを、大学側と話をしています。
「不登校の子たちが増えています。それを変えるためにやっていきたいこととか、安心して学校で学んで社会に進出できるようどういうことをやっていきたいとか、具体的に案があればお聞きしたい」(?越舜くん)
フリースクールとかそういう居場所ですね。そういったものの確保と言いますか。いますでにそういうことをやっている団体もありますので。そういった団体と意見交換するなかで、当事者の皆さんが望んでいることをしっかり聞き取って、それに合わせた居場所であったり。そのフリースクールの支援であったり。そういった具体的な支援をしたいということが一つと。
あと、今年千曲市では「こどもまんなか宣言」というのをしまして。こどもも一人の市民として、皆さんがどういうことを考えているか意見を表明する機会を作って、市でそれを聞いて反映させるという、そういう取り組みを始めています。その一つが「ポリネコ!CHIKUMA」※。「ポリネコ」というアプリを使って、インターネットで双方向でやり取りをする。アンケートの形式をとることもありますし、自由に意見を伝えてもらう。そういう取り組みをしています。それがいま中学生とかにやってもらっていて、まだ全部の中学校で取り組んでいるんじゃないんですけども。市内の公立中学校も2校ぐらいですかね、いまもう具体的にやっていて。それを全校で広げていきたい。
「ポリネコ」を使わなくてもいつでも誰でも市の方に自由に意見を言えるような、そういう体制は整えていますので。そのことをもっと知ってもらうことが必要だと思います。そういうことも知らせていきたいですね。
※編集部注・「ポリネコ!CHIKUMA」は千曲市で導入している住民参加型コミュニケーションシステム。11月15日に地域の民主主義向上に資する優れた取り組みを表彰する「マニフェスト大賞」のシティズンシップ部門の優秀賞を受賞し、東京・港区の虎ノ門ヒルズで行われた授賞式で小川市長らが表彰を受けた。「ポリネコ!CHIKUMA」
「市長は日常的にはどのような仕事をしているのですか」(阿部恵さん)
市長の仕事はいろいろあってね。こういう皆さんの取材を受けるとか。来客、お客様の対応というのが結構多いですね。どうしても市民の方って色々な要望があって、要望書を持って「市長にぜひ私たちの声を届けたい」っていう方がいらっしゃって、いろいろとお話をお聞きすることが多いですね。
あとは市の仕事って、それぞれの課の中で出来ることも、予算を使ってやることがほとんどなので。じゃあ最後誰がOKを出すかということですよね。部長でOKの場合もありますけども、部長でも金額だとか内容的に判断できない時には最終的に副市長、市長の順番に書類が回ってくる。で、それを確認して「じゃあこれで行きましょう」とか「これでOKですよ」っていうのをハンコを押すんです。最近は電子決裁と言ってパソコンでやるのでハンコを押すことは大分減りましたけど。要は決裁っていうことになります。書類の決裁。それが結構な量があって…事務仕事とはそういう決裁とか。決裁するには当然書類の中身を読まなければいけないし、読んでわからないことがあれば担当の職員さんを呼んで教えてもらうっていう。
職員さんに色々教えてもらうのは、レクチャーを受けるから「レク」って呼んでいます。「レク」の時間が結構多いですね。
「行政書士をやられていたということでしたが元々政治に関心を持ったきっかけは?」(角田梨奈さん)
行政書士という仕事をやっていて、ちょっとわかりづらい仕事なんですが。書類を基本的に作って…その書類というのは市や県や国に出す書類なんですけど。その書類を作ることは当然、法律を知らないと駄目なんですよ。それで、行政っていうのは基本的には法律とか規則とか条例とか、そういうものに従って何でも物事が動いているんですね。
そういうことで元々法律を勉強していたので、学生の時に。そういうことに関心はあったんですね。どうしても政治と法律って密接に関わっているので。物事を動かすには全部ルールに従ってやらなければいけないから。それで関心はありましたね。
「私たちの屋代高校でも政治関係の道を志す人も少なくないと思うので、そういった人に対してどういう目的をもって行動した方が良いとか、アドバイスを頂けないでしょうか」(佐藤敬利くん)
私は正直誉められたものじゃないので…(笑)いまはね、こうして市長をさせてもらっていますけど学校、高校生の時は当然そんなことは考えていなくて。
ただ、一つ言えるのはこの年になって思うのが、やっぱりチャレンジすることは大事だなと思います。何でもいいと思いますけど。班活でも何でもいいですけどね。選挙に出て一番自分の中でありがたいなと思ったのが、学生の時の先輩・後輩・同級生ですね。特にわたし柔道班だったんでね。その先輩とか、直接今まであった事のないOBの人たちとも大人になってから、いろいろOB会とかがあって、そこで接すると、やっぱり当時一生懸命やっていたので、皆さんそういう人の集まりだから、何か初めて会う先輩たちだけど気持ちが通じるんですよね。「じゃあ小川君が挑戦するんだったら俺たちが応援するよ」っていう形で。一生懸命先輩たちに応援してもらったりとか。そういうことはありましたね。
なので何でも挑戦するってことと、あといまやっていること、皆さんそれぞれあると思うんですけど、それを一生懸命やるっていうことですよね。受験でも班活でも何でも…また、趣味でもいいんですが。自分がいまこれ一生懸命やろうと思ったら、中途半端が一番よくないですよね。
「市長の仕事でやってきて『やり甲斐があったな』ということはありますか」(角田梨奈さん)
やり甲斐は全部やり甲斐がありますね。こどもの医療費(の無償化)なんていう話一つとっても、自分が市長になる前は中学3年、15歳までだったんですね。それが18歳まで引き上げますって言って、実際そういう指示を出して、議会の同意ももらって、それが実現できたんですね。この次の段階は完全に500円も払わない無料化にするって言って、おそらくそれも上手くいくはずなので。そうすると自分がこれをしたいと言ったことが上手くいって、それで医療費がタダになるということで子育てをしている方々には、感謝もしてもらえる訳ですよ、おそらくは。そういうこともあって、自分の考えが皆さんに理解してもらって、また一つ千曲市が住みやすくなるための前進をしたと思えた時がやり甲斐を感じますね。達成感があります。
議員の時もそうですけどね。「こういうことやったらどうか」って言って、市長が「わかりました。やります」ってやれば同じなんですけど。それよりも直接自分で思ってやりたい。どうかって皆さんに聞いて「じゃあいいんじゃないか」ってなって物事が動く。社会が動くってことが達成感がありますね。
「これまで市長をしてきたなかで、地方公共団体だったり行政を行う人たちはどうあるべきかと思われますか。小川さんの場合はどういうものか教えてほしい」(佐藤敬利くん)
そうですね…よく職員さんに言っているのは「ソウゾウリョク」を持ってほしいということです。「ソウゾウリョク」って二つの「ソウゾウリョク」で。例えば相談に来た市民の方がどう思っているのかとか。自分がこういう話をしたらどう思うかとか。そういう相手の立場に立って考える「想像力」と、あといままで前例にないようなことも何とか対処しなきゃいけない時にどうするか…創意工夫ですね。どうしようっていう時の「創造力」、クリエーションの方の。イマジネーションとクリエーションとよく言ってますけど。二つの「ソウゾウリョク」ですね。
イメージする方の「想像」とクリエイトのほうの「創造」。それを持って仕事をしましょうということはずっと言ってきていますし、自分も心がけています。
さっき言ったチャレンジが大事ってこともずっと言っていて。どうしても役所の仕事って法律とか条例に従ってやるのが原則だし、そうじゃないといけないんですけど。そこにないような話とか、新しく出来てきた、世の中の流れが変わってきたときにどうするかっていう時には考えないと駄目じゃないですか。その時はじゃあ皆でどうしたらいいか考える。そういうことはよく言っていますね。
だからちょっと、固い仕事なんだけど柔らかい頭も持ってほしいなと思っています。どうしてもね、職員の皆さん真面目な方が多くて、基本的に。真面目っていいんですよ。その通りルールに従ってやる仕事だからいいんですけど、ルールにないこととか、新しい世の中になった時にどうするかっていうことは考えないといけないですよね。自分でも同じなんですけど、わからないことは一杯あるんで。それは、じゃあ皆で考えて。じゃあどうすればいいのかってことは考えるようにしましょうということです。
「本日はありがとうございました」
(屋代高校新聞班一同)
ありがとうございました。
(進行役/ちくま未来新聞)
小川修一千曲市長へのインタビュー行った屋代高校新聞班の班員たち
(右から栁沢舜也くん、佐藤敬利くん、吉越舜くん小川市長を挟んで角田梨奈さん、阿部恵さん)
千曲市長インタビュー高校生記者の関心は?
取材を終えて
小川修一市長は屋代高校の第38回生(昭和61年卒)。新聞班の班員たちにとってちょうど40年程前の代の先輩にあたる。彼らは過去に大学の学長などとの面談の経験はあるというが、現役の自治体の首長と会う機会はなかなかないとのことで取材後には「緊張した」と振り返っていた。確かにインタビューの前半は若干硬い表情も見られたが、後半からはプライベートに関する質問も繰り出していき、徐々にリラックスした雰囲気に。「高校時代に好きだった教科」や班活(部活)の話題では、市長も「高校時代に戻りたいと思うことがある。逆に言うと高校生の時は一番大事な時かなと思う」と当時を懐かしんでいた。
今回参加してくれたのは班長の栁沢くんをはじめ4人が2年生(阿部さんのみ1年生)だったが、若い世代ならではの新鮮な感性で鋭い質問を投げかけてくれた。39年前、新聞班で「鳩ケ丘新聞」に関わった筆者にとっても実に頼もしい後輩たちであった。新聞班では現在「鳩ケ丘新聞」をほぼ毎月発行しており、今回の取材についても記事にする予定とのことだ。
(インタビューまとめ・構成/ちくま未来新聞編集長・白石茂樹)