坂城町商工会 鈴木雅視会長インタビュー
全国の町や村で地元企業への助言や支援などを行い、地域経済を支えている商工会。モノづくりの町・坂城の経済振興と地域発展に注力する坂城町商工会(会員数・402)の鈴木雅視会長に現在の課題と将来への展望を聞いた。
鈴木雅視会長は千葉県の出身で1989年(平成元)に長野県に移住、昭和樹脂工業㈱に入社した。2000年に父の先代社長から会社を引き継ぎ、代表取締役社長となり経営に尽力。2019年にはベトナムに工場を構え、海外初進出を果たす。坂城町商工会会長には去年5月に就任した。
課題は労働力の確保
令和7年10月現在、坂城町の事業者数は商工業事業所数が668、小規模事業者数は567となっている。竹内製作所や日精樹脂など県内屈指の好業績を誇るメーカーも本社を構えるが、鈴木会長は人手不足感はこの坂城町でも見られると話す。千曲市の新しい産業団地建設で大手メーカーが大規模な募集をかけ、坂城町からもかなり多く採用されたため「去年、一昨年は特に人手不足だった。どこの事業所も人手が足りないという前提で取り組んでいる(鈴木会長)」という状況だ。10月3日、長野県の最低賃金は63円引き上げられ時給1061円となり、初めて1000円の壁を突破した。鈴木会長は「最低賃金を上げることは良いこと。一方で今まで働いていた人たちの賃金も合わせていかないといけない」とし、負担が大きい零細企業のために商工会でも小規模事業者支援に力を入れている。
一方で、労働力確保のため外国人労働者も増加。以前はブラジルや中国の労働者が多かったが、いまはベトナムからが一番多いのではないかとのことだ。鈴木会長によると昭和樹脂工業でも現在9人のベトナム人労働者が働いている。町内で働く外国人労働者は地元の自治体のお祭り等にも参加して住民と交流しているそうだ。町商工会では中小企業能力開発学院で外国人向けに日本語教室やパソコンソフトの指導などの勉強の場を設けてサポートしている。
次世代の子供たちに体験の場を
また、坂城町商工会が力を入れているのが地元の子供たちへの地元製造業の啓蒙だ。10月にはさかきテクノセンター主催の「さかきモノづくり展」に合わせて「さかきオープンファクトリー」を開催。町内18の企業で小学校6年生と中学校2年生が工場を訪問、機械操作などを体験した。これは工業部会の若手や40代の職員が危機感を覚えて発案し、企画したものだという。テクノハート坂城協同組合や坂城町もモノづくり体験の場の創出に取り組んでいるが「中学くらいからやっていくという思いは共通している。どうやって後継者を作っていくかがテーマ(鈴木会長)」と語る。
地域へのメッセージ
鈴木会長が昭和樹脂工業の社長就任当時は医療現場の環境変化で従来製品の売上が急減。厳しい状況が続いたが、これまで培ってきた医療機器の製造技術で吸引器用容器を同社の主力製品にまで成長させた実績を持つ。最後に会長に地域に向けての思いを伺うと「時代時代で良い時もあれば悪い時もある。必ず波はあるが、希望を持って取り組んでいって欲しい。どこかに希望を見出してもらいたい」とのメッセージを伝えてくれた。

鈴木雅視会長

坂城町商工会館

「さかきまち のど自慢大会」(主催:坂城町商工会) 10月18日にB.1プラザさかき駐車場で開催された
