富士通 新光電気を売却 ■政府系ファンドJICに約7000億円

富士通 新光電気を売却 ■政府系ファンドJICに約7000億円

 富士通の子会社で半導体のパッケージ基板を手がけるメーカー、新光電気工業の売却が昨年12月12日23時55分の情報開示となった。富士通は新光電気工業を政府系ファンド・産業革新投資機構(JIC)へ売却すると発表した。

 地元情報に強い信濃毎日新聞、経済紙の日本経済新聞が先行報道する形となったが、深夜開示だった。

 半導体の製造工程において、ここ数年とくに注目度が高まっているのが半導体を搭載する「パッケージング基板」だが、新光電気はその基板製造で世界有数の企業。国内の調査会社テクノ・システム・リサーチによると、半導体パッケージ基板の世界的シェアは9・2%で4位(2023年)。主力の高性能パッケージ基板の増産に向けて千曲市雨宮の工業団地に新工場を建てており、来年度上期にも稼働する予定という。富士通はかねてから非中核事業の切り離しを進めていくうえで新光電工株の売却方針を明言していた。

 新光電気は東証プライム上場。売却発表翌日の終値は5460円、前日比68円安だった。時価総額は約7500億円。

 新光電気は富士通が50.02%の株式を保有する。JICが買収のための新会社を設立し、24年8月下旬をメドに新光電気に対してTOB(株式公開買い付け)を実施する。買い付け価格は1株5920円。

 これら一連の買収総額は6850億円。新光電気はJICの完全子会社となり、上場廃止になる見込み。関係者によると、富士通はTOBに応じず、新光電気が富士通の持ち分を引き取る。新光電気への出資比率はJICが80%、大日本印刷が15%、三井化学が5%になる。

■高性能パッケージ基板で世界有数

 新光電気は戦後1946年に創業。当時は家庭用電球のリサイクルが主な事業だったという。本社や主要な生産拠点は長野県内で、中野市高丘工場をはじめ長野市の更北、若穂工場、そして千曲市雨宮に新工場の竣工・稼働が控える。23年3月期の売上高2863億円のうち27%はインテル、12%はAMD向けとされ、富士通向けの取引はそれほど多くない。海外売上高比率は約90%に達する。

(本紙特任記者・中澤幸彦)

竣工が近い新光電気工業の千曲工場