思いを形に夢咲く文 第1回 伝えたい核は?読んでもらいたい人は?
伝えたい思いはあるけれど、文章にまとまらない。そういう方の相談には二つの質問をします。「伝えたい思いの核はなんですか」「その思いはだれに伝えたい(読んでもらいたい)のですか」
伝えたい思いの核と読者の明確化は、伝わる文章を作るときに欠かせません。思いの内容と読んでもらいたい人は、二つの質問を自らに交互に投げかけながら、絞っていきます。思いの核が分かっていても、読んでもらいたいのが子どもや孫であれば、書く材料や文体も変わってきます。両方の問いを自分に課すことで、何をどう書けばいいか、スタートラインに立つことができます。読者が定まると、伝えたい内容もはっきりすることがあります。
こうした作業を一人でやるのは訓練が必要です。わたしは新聞記者の仕事を通して、基本、一人でやることができるようになりました。それには上司のデスクという文章を作るときの相談、指導役の手ほどきがありました。
伝わる文章は訓練をすれば書けるようになります。訓練に大事なのは、思いを聞いて、核の部分をつかまえるのに協力してくれる人、書いたもの読んで率直で的確な感想を言ってくれる人、そして表現を整えてくれる人です。一人で思いの核を知ることは簡単ではありません。いくつか書き上げていくと、一人でも伝わる文章が作れるようになります。
自治体合併による更級郡の消滅(2005年)が残念で、「さらしな」の地名の魅力を紹介する「更級への旅」という瓦版を自分のホームページで20年近く続けています。さらしなの超一級ブランド力を伝えたいという思いからです。新聞記者の仕事から学んだ作文技術も踏まえ、伝えたい思いを伝わる文章にするにはどうしたらいいか私流の方法を書いていきます。
(夢の作文支援センターさらしな堂代表 大谷善邦)
略歴■元共同通信記者。生地が「更級日記」題名の地(旧更級郡更級村、現千曲市若宮)であることから、伝えたい思いがある人の作文を手伝う作文支援業を営む。著書に「白 さらしな発日本美意識考」など。