森のあんずまつり 2年ぶりに開催  杏農家の課題と挑戦

 

 日本一のあんずの里

 3月27日から4月11日までの日程で千曲市森地区の第66回あんず祭りが開催中だ。昨年は新型コロナによる緊急事態宣言下で中止となり、2年ぶりの開催となる。

窪山展望公園ではキッチンカーが出店するなど盛況で、適切な感染症対策のもと20万人の来場を見込んでいる。 その一方、昨年の凍霜害など大きな損害を被った杏農家は高齢化と生産者の減少という課題に直面している。杏栽培を廃業した農家や高齢化した世帯では杏の木を伐採してしまう。いずれは「一目十万本」と謳われたあんずの里の景観も保でなくなるのではという懸念かおる。 

あんずまつり推進委員会顧問の林慶太郎市議は「あんず栽培の負担を減らすことと、収入として魅力が感じられるものとすることが重要だ」と語る。 新たな3つの栽培法 そんななか、他県からも視察に訪れる注目の栽培法を実践する農家がある。倉科在住の杏農家・北條昭宣さんは定年退職後に就農。独学で梅農家などの栽培法を学び、着実に成果を上げてきた。 

杏の栽培では三脚を立てて行亘局所での剪定や摘果の作業が大きな負担になる。また高齢者には転落の危険も生じる。熟練した農家にはともかく新規就農の際にはこの作業が大きなハードルとなるという。 北条さんが普及を進める3つの栽培法、一つ目の「低位栽培法」は紐吊りという手法で枝を上に伸びないよう矯正して低樹高に変えるものだ。簡単に手が届く高さに実が成るため、作業効率は格段に向上する。  

生産性の高い品種への転換も進められている

「高枝接ぎ」は生産性が高い品種への品種更新だ。古い品種 (平和・昭和)にハーコットや信山丸などを接ぎ木していき転換を進めていく。 三つ目は複数の苗木を接ぎ木して、横一列に繋いでいく「樹体ジョイント栽培法」。こちらでも鉄筋や鉄パイプなどを使い低樹高を実現。枝全体に日光がいきわたるように工夫がされている。アーチ状に伸びた枝は横移動するだけで収穫が出来るため収穫が容易となる。さらに苗木の根回りに黒いビーニルを敷くことにより生育を進めることにも成功した。 

北條さんの植えた苗は5年間で1000本を超え、いまではこれらの栽培法を導入する近隣の農家も増えたという。 あんずの里を維持していくための新たな模索と挑戦。伝統に新しい技術を接ぎ木していく森の杏に未来への可能性を見た。