歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
革靴のそばにひかえる細長のくつべらのようなわれの役割
荒井よし子
くつべらは、使う方も使わない方もおられる。また使うときも使わないときもある。いつ必要になるかわからないが革靴のそばにそっと控えている。自分の役割はそれでよいのかもしれないと思う作者。
【佳作】
九十年生きりゃ自在よ歌詠みつなんじゃもんじゃの風に吹かれて
倉石みつる
自在、は作者にとって自在に詠むということだけでなく、自在に生きることも意味しているのであろう。この達観がなんじゃもんじゃと相俟って軽妙な歌になった。
六月はなにか大きな使命もちて石楠花はさく病院ロビーに
荒井よし子
病院のロビーにある石楠花。それは何か大きな使命をもって咲いているように見えた六月。患者を励ますことか、命を救うことか、戦争終結のことか。あれこれ想像させてくれる歌。石楠花の花言葉は危険・警戒・威厳であるという。
【入選】
こんなことあっていいのかガザの子ら今朝も登校のわが町の子ら
土朗
ブランコに乗せるがに再編の県教委未来の子ども落とさぬように
土朗
今回は諏訪出身のアララギ派歌人、島木赤彦の歌を鑑賞したい。
隣室に書よむ子らの声きけば心に
沁みて生きたかりけり
我が家の犬はいづこにゆきぬらむ今宵も思ひ出でて眠れる
いち日の尊きことをつくづくと心に沁みて手をとりにけり
【応募要領】
■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係